ニュース速報

ビジネス

スズキ会長「法令違反の認識希薄」と陳謝 5月の軽販売は18%減

2016年05月31日(火)22時09分

 5月31日、スズキは燃費試験用データの測定方法での不正に関する社内調査結果を国土交通省に再報告した。写真はスズキの鈴木修会長(2016年 ロイター/Issei Kato)

[東京 31日 ロイター] - 法令違反の方法で燃費試験用データを測定していたスズキ<7269.T>は31日、社内調査結果を国土交通省に再報告した。報告後に会見した鈴木修会長は、燃費を不正に操作する意図はなかったが、「法令違反に対する認識が甘かった」と陳謝した。

ただし、不正車を国が定めた「惰行法」で測定したところ、カタログ表記の燃費値を上回ったため、販売は継続する。

同社が不正を初公表した18日、法令違反の測定法を使った背景について、テストコースが海に近い丘の上にあり、風の影響を受けることからデータのばらつきが大きかったなどと説明したが、鈴木会長は「テストコースの件は小さな要因で、法律を守らなかったことが大きな要因」と指摘。「全体の責任は経営者にある」としながらも、「今は再発防止策を立て、やり遂げることが第一の責任」として辞任しない考えを示した。同会長はまた、5月の軽自動車販売が前年同月比18%減だったことも明らかにし、不正の影響があったとの認識を示した。

社内調査では、特定の個人が規定外の測定法を強要した事実はなく、指示文書やマニュアルなどもなかった。再発防止策として技術者教育・研修や社内チェック体制を強化する。一方、該当車両数は18日時点では相手先ブランド(OEM)車含めて計27車種の210万台としていたが、今回はスズキ車14車種、OEM車12車種の計26車種、約214万台に訂正した。

今回の不正では、車両開発のため室内で測定したタイヤの転がり抵抗、ブレーキの引きずり抵抗などの測定からなる値を積み上げた上で、空気抵抗やタイヤと路面の摩擦で生じる走行抵抗値と呼ばれる車両全体の燃費試験用データを求めていた。同時に車両開発時に試作車で惰行法による検証も行っていた。型式指定を取得する時に提出する負荷設定の記録では、車両開発のために車種ごとに惰行法で測定した日付、大気圧、天候、気温などの測定結果を記入し、積み上げによる走行抵抗の測定値と惰行時間とのつじつまが合うよう記録し、惰行法による測定値として提出していた。

2010年以降の車種で法令違反の方法が使われていた理由については、10年当時、リーマンショック後に再開した新車開発などに対応するため、惰行法の測定に十分な人員配置ができていなかったことが1つの要因とした。また、欧州向け車種の走行抵抗値では部品ごとの積み上げによる測定結果を用いて補正することが認められていた。このため、国内でも使用できると誤解が生じ、以降も踏襲されていったと推測しているという。

国交省は三菱自動車<7211.T>の燃費偽装を受けて、自動車メーカー各社に同様の不正がないか調査を指示していた。スズキは18日、室内で計測した部品ごとの抵抗値を積み上げ、国に提出していたと公表。同省は31日までに詳細な追加報告を求めていた。

*内容を追加して再送します。

(白木真紀、宮崎亜巳)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中