コラム

大統領への道「勝負の100日間」ハリスの物語と夢のパワーがアメリカの命運を決める

2024年08月01日(木)18時38分
物語と夢のパワーがアメリカの命運を決める、ハリス

大統領になる資格がないというレッテルを覆せるか(7月24日) BRENDAN SMIALOWSKIーPOOLーREUTERS

<彼女は「無能な黒人女性」か、それとも「全てのアメリカ人の代弁者」か? 有権者が受け取るハリスの物語が選挙の行方を左右する>

カマラ・ハリスはどんな夢を見させてくれるのだろうか?

選挙は物語と夢が全てだ。リーダーについて、希望と恐れについて、そして、必死に夢を追い続ければ実現するかもしれない未来について。


そうした夢は、金利政策や不法移民対策への理性的な意見よりもはるかに人々の投票行動に影響を及ぼす。 実際のところ、人の思考の大半は、自己欺瞞にもっともらしい理由を付けた願望や先入観なのである。

2020年大統領選へのハリスの挑戦が失敗したのは、脆弱で中身がなく、大統領になる資格のない黒人女性という物語のせいだった。だが7月21日、弱々しい老人の物語を背負ったジョー・バイデンが大統領選からの撤退を表明すると、副大統領のハリスが民主党の最有力候補に浮上。

バイデンとドナルド・トランプのどちらにも嫌気が差していた有権者の心に電撃が走った。そしてアメリカの物語と夢を紡ぐ者たち──各政党、著名人、マスメディア──は、11月の投票日に向けてアメリカ社会に新たな呪文を唱え始めた。

第47代アメリカ大統領に選出されるのはハリスか、それとも重罪犯で強姦魔のトランプか。その答えは、ハリスをめぐるどんな物語が平均的な有権者に受け入れられるか次第だ。

過激で無能な黒人女性? 
全てのアメリカ人のために前向きな提案ができる有能な黒人女性? 

世論調査では既に、バイデンよりハリスのほうがトランプに勝てる可能性が高いことが示されている。

評価を下げた不法移民対策

ハリスには重大な弱点がある。

存在感の薄さという全ての副大統領に共通の宿命だ。ハリスは無能で何の業績も残していない、というのが一般的な認識で、FOXニュースや共和党も盛んにそう宣伝してきた。

もっとも、副大統領はそもそも無力で感謝されにくい存在だ。トランプ政権のマイク・ペンス副大統領も存在感の薄さに悩まされていた。

ハリス自身の就任1年目の振る舞いも、この物語を強化した。

バイデンはハリスを南部国境地帯の不法移民対策の責任者に任命したが、政権1年目の不法入国者数が激減することはなかった(現在はトランプ政権の最後の年より少ない)。

この問題に関するインタビューで防戦を強いられたハリスは、悪評を避けるために表舞台から姿を消し、好感度は歴代副大統領で最低水準を記録した。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米、エアフォースワン暫定機の年内納入希望 L3ハリ

ビジネス

テスラ自動車販売台数、4月も仏・デンマークで大幅減

ワールド

英住宅ローン融資、3月は4年ぶり大幅増 優遇税制の

ビジネス

LSEG、第1四半期収益は予想上回る 市場部門が好
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story