コラム

クールジャパン機構失敗の考察......日本のアニメも漫画も、何も知らない「官」の傲慢

2022年12月11日(日)20時27分

関心がないのならCJ機構など作るべきではないが、「成長戦略が~」という掛け声のもと無理やり予算を付けると事業としては動き出してしまう。もう止まらない。破滅に向けて一直線に坂道を転がっていく。

政治家もCJ機構の中の人も全部そうなのである。カルチャーのことをまるで知らないのに、カルチャーの分野で投資行動をする。だから失敗する。悪い意味で最初から失敗が約束されていたのがCJ機構なのだ。こんなバカげたことがあるだろうか。株式投資をするにあたって、財務諸表を読めないとか、チャートの読み方を知らない、PBRという単語の意味が分からない、という人は居ないはずだ。何故かと言えば、そのような無知のまま投資を行えば必ず失敗するし、その失敗は直接的に自分の財布を痛めるからである。

CJ機構は官民ファンドであるが、実際には税金を原資とした政府出資の方が多く、つまりは「他人のカネ」だからこのような感覚がない。リスクへの抵抗感がなく、失敗しても自分の財布は痛まない、という意識の上に胡坐をかいているので、土台儲からない滅茶苦茶な案件を「有望」と判定して出資してはすべて失敗して巨大な赤字を垂れ流し続けているのである。

興味がないならクールジャパンに関与するな

投資するためには敵(競合)を知り、己の実力を知らなければならないが、そもそもそういった感覚がないので、日本のカルチャーが~、サブカルが~、クールジャパンが~と掛け声を繰り返すだけで、たった1クールのアニメすら観る努力をしていない。1クールは原則13話からなる。『太陽の牙ダグラム』よりずっと手軽に見ることができる。OPとEDをカットすれば正味5時間で終わる。『風と共に去りぬ』(約4時間弱)を観ることができる体力があるのなら簡単な筈だ。だが観ない。興味が無いからだ。

政治家や高級官僚に対して『ポプテピピック』を楽しめるようになれ、とは言わない。『ソードアート・オンライン』を見なくてもいい。原作も読まなくていい。シリカちゃんが何なのかわからなくてもいい。『カウボーイビバップ』を『天国の扉』に至るまでルドビコ療法的に「渡辺信一郎の傑作だ!」などと叫んで強制したりしない。古典的なスペースオペラが好きなら『コブラ』を1話だけ見てくれればいい。ヤマトも『愛の戦士たち』だけを見ればよい。『2199』まで見る必要な無い。「ミノフスキー粒子」が何のことなのか知らなくてよい。ジオンに兵があってもなくてもどっちでもいいだろう。無理しなくていい。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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