コラム

無価値不動産購入のススメ

2021年10月27日(水)16時50分

知事の許可等が無ければ基本的に開発のできない市街化調整区域は、無価値どころか金を払ってでも手放したいという所有者がいるだろうが、ホームセンターで売っているごく簡便な物置程度以外は、原則としてユニットハウスも置いてはならないので注意が必要である。できれば市街化調整区域ではない平坦地にユニットハウスを建設しよう(各自治体の担当者に聞くべし)。この場合、土地代+登記諸経費+ユニットハウス代で総計60万円程度で立派な倉庫が完成する(月1万円のトランクルームを5年借りる金額で所有権が手に入る)。それでも初期費用を抑えたい場合は、やはり最初から使用に耐える小屋付きの土地をじっくりと探すことをお勧めする。

またある程度不動産取引に詳しければ、競売物件の落札を図るのも可である。裁判所が管轄する競売物件は、土地付き家屋(一戸建て)や区分所有権(マンション)を安価で落札できる場合があるため、不動産屋の仕入れ先になっている。が、大抵占有者(居住者)が存在し、マンションの場合は管理費を滞納しまくっていて数百万円の負債と一緒に買うことになるため、素人にはお勧めできない。

 よって競売物件で狙うのはそもそも占有者が存在しない「只の土地」で、坪単価は数千円に満たない場合もある。どうやって入札したらよいのか全く分からない場合は、管轄する地方裁判所の窓口に行って聞いてみよう。運が良ければ市価の半値~数分の一以下で土地が手に入る可能性が出るが、詳しくは裁判所が公開している「三点セット」を参照してよく吟味してほしい。

*無価値不動産の維持費

 ここまでしてこのような無価値不動産の維持費はどうであるのか、という点である。まず不動産取得税が一回限りかかる。これは取得した不動産に属する自治他体から数か月後に送られてくるもので、無価値不動産の場合は、数千円から高くても2万円に満たないだろう。

 これ以外に注意するべきなのは不動産を所有する人間には漏れなく追尾される固定資産税であるが、その不動産があまりにも無価値の場合は、ある一定の評価額より下であれば全額免除される。つまり維持費が0円の場合もありうる。筆者の写真にある小屋付き土地の場合、年間固定資産税は約3000円である。月にすると250円程度になる。

これ以外に、考慮すべき維持費というのはない。もし小屋に電気を引きたい、土地の上に建てたユニットハウスのクーラーを動かしたいとなれば、電力会社との契約が必要(最も近い電柱から最適に電線を通してくれる。特別な事情がない限り工事費は無料)だが、毎日行くわけではないから契約アンペアは最低単位でよい。地域にもよるが月にすると12~1300円程度である。無価値不動産の利点は、毎月の維持費が限りなくゼロに近いことである(尤も、土地の評価額が高騰すれば固定資産税は増大するが、無価値不動産の立地で、この時代状況ではそういったことは起こりにくい)。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 8
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story