コラム

超高額ダボス会議のオツムが心配

2011年01月27日(木)17時46分

 政財界のエリート(そしてボノ)とお近づきになるには、毎年この時期にスイスで開催され、世界で最も難しい課題に取り組むことで知られる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出るのが一番だ。だが今日のニューヨーク・タイムズ紙は、その入場料は「かなりの高額」になると伝えている。


 フォーラムの会員にはさまざまなレベルがある。自分一人だけが出席できる基本会員の場合、会費は5万スイスフラン(約5万2000ドル)。会議に参加するにはさらに1万8000スイスフラン(1万9000ドル)プラス税金がかかり、会員になって出席するだけで合計7万1000ドルかかることになる。

 だがこれだけのお金を積んでも、顔を出せるのはせいぜい一般討論会止まり。VIP専用のプライベートな会合に招かれて同業の有力者たちと言葉を交わしたいのなら、「特別会員」にならなければいけない。それには会費13万7000ドルに参加費を加え、合計約15万6000ドルが必要になる。

 もちろん政財界のお歴々はどこへ行くにも取り巻きを連れて歩くから、その分のお金の必要だ。だが、部下のために追加の参加費1万9000ドルを払えば済むと思ったら大間違い。会費が約26万3000ドルの「ゴールド会員」なった上で自分と部下の参加費を払わなければならないので、合わせて30万1000ドルを払わなくてはならない。


■財力で決まる参加資格

 こうした舞台裏を考えれば、ダボス会議が問題を解決してくれる場所だという過大評価がまるで馬鹿げたものに感じられてくる。百歩譲って、大金を払ってダボス会議に出席する人たちの目的が有力者のコネではなく、グローバルな課題の解決だったとしよう。そうだとしても、財力があるという理由だけで彼らに世界の問題解決を委ねるのは納得がいかない。

 出席者たちは概して裕福で、ビジネス界に多大な影響力をもつエリートたちだ。世界のGDPに対する比率と比べると、アメリカ人とイギリス人の出席者数が突出して多い。その上、トップ企業の出席者に1人は女性を含めることなどを規定したダボス会議の男女平等推進の新方針にもかかわらず、ほとんどの出席者はいまも男性ばかり。

「裕福なアメリカ人男性」がいけないと言っているわけではない。だが今後メディアが報じるだろうダボス関連のバカ騒ぎを目にするに当たって、こうした実情は念頭に置いておくべきだろう。

 ダボス会議は、短期間の間に世界規模の問題を解決しようとしてはいつも「失敗する」会議としても知られる。排他的な金持ちクラブのやることだから、案外そのほうが平和かもしれない。

──エリザベス・ディッキンソン
[米国東部時間2011年1月25日(火)04時50分更新]

Reprinted with permission from "FP Passport", 27/1/2011. © 2011 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日米韓が合同訓練、B52爆撃機参加 3カ国制服組ト

ビジネス

上海の規制当局、ステーブルコイン巡る戦略的対応検討

ワールド

スペイン、今夏の観光売上高は鈍化見通し 客数は最高

ワールド

トランプ氏、カナダに35%関税 他の大半の国は「一
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 10
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story