コラム

カルザイ麻薬疑惑に食い下がれ

2010年04月08日(木)16時04分

 アフガニスタンのカルザイ大統領はヤクでもやっているのか? 国連アフガニスタン支援団のピーター・ガルブレイス前副代表が4月6日に述べたコメントは、明らかにそう示唆していた。

「彼は長広舌だ」と、MSNBCの番組でガルブレイスは語った。「非常に感情的になったり衝動的に行動することがある。実は大統領官邸のインサイダーによると、彼はアフガニスタンの最も収益性の高い輸出品を嗜好しているそうだ」。いかにも内容を察してくれと言わんばかりだった。

 カルザイが麻薬中毒だと非難しているのかと聞かれると、ガルブレイスはかわした。「そういう趣旨の報道がある。ただ原因が何であれ、現実に彼は非常に感情的になることがある」

(ここでガルブレイスには個人的な思惑があることに注意すべきだろう。彼は昨秋、国連を解任された。カルザイの選挙不正を執拗に非難して上司のカイ・エイダとぶつかり、アメリカと国連に何らかの手を打つように圧力を掛けたためだ。)

 今日(4月7日)の国務省の記者会見で、クローリー次官補は、ガルブレイスの発言に関して何とか失言を引き出そうとする報道陣の度重なる質問をはねのけた。


記者 きのう大使が・・・ガルブレイス前大使がテレビ出演してかなり直接的な・・・・・・。

クローリー とんでもない非難?

記者 どう表現するかはお任せしますが・・・・・・。

クローリー 私はそう表現します。

記者 アメリカ政府として、カルザイ大統領が例えば官邸の地下に隠れてマリフアナを吸っているとか、もっとひどいことをしていると考える理由はありますか?(笑)

クローリー 彼はアフガニスタンの大統領です。われわれと密接に関わってきました。長官は金曜日に彼と話をしました。アイケンベリー大使も金曜日に話したし、マクリスタル司令官とアイケンベリー大使は週末を彼と過ごしました。ピーター・ガルブレイスによる非難を支持する情報は持ち合わせていません。


 その後、記者たちはさらに試みる。


記者 ガルブレイスの発言・・・。

クローリー それが何か。

記者 ・・・でも麻薬疑惑は別として、彼は大統領の、「気まぐれ」が適切な言葉かもしれませんが、そういう言動について語っています。アメリカ政府はカルザイの安定性、精神の状態、あるいは最近の不規則な行動について懸念していますか。

クローリー いいえ。

記者 まったく?

クローリー まったく。


 そして、気持ちを込めて、もう一度。


記者 つまりガルブレイスの意見に同意しない・・・・・・。

クローリー しません。

記者 ・・・について・・・。

クローリー しません。

記者 多少なりとも?

クローリー 彼は、いいですか、彼はアフガニスタンの大統領で、われわれが尊敬する人物で、われわれと密接に協力して、全国レベルで実効性ある政府を作り上げようとしている人物です。そして、われわれは地方レベルでも実効性ある政府をつくるため、アフガニスタンのほかの人たちとも協力を続けます。


 惜しかったね、みんな。

──ブレイク・ハウンシェル
[米国東部時間2010年04月07日(水)19時47分更新]

Reprinted with permission from FP Passport 8/4/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日米韓が合同訓練、B52爆撃機参加 3カ国制服組ト

ビジネス

上海の規制当局、ステーブルコイン巡る戦略的対応検討

ワールド

スペイン、今夏の観光売上高は鈍化見通し 客数は最高

ワールド

トランプ氏、カナダに35%関税 他の大半の国は「一
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 10
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story