コラム

カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らかに ヒト以外で確認されたのは初めて

2024年06月05日(水)21時30分

さらに、要求された発声回数が多いほど、カラスの発声までの準備期間は長くなりました。このことは、カラスが直前の差し迫った状態で、発声回数全体を計画していることを示唆していると言います。

また、回数を間違える際に、①中間の鳴き声を飛ばしてしまうエラー(1→2→3とすべきところを1→3と鳴く)と、②同じ鳴き声を繰り返してしまうエラー(1→2とすべきところを1→1→2と鳴く)に特に注目して分析すると、①は発声回数を少なく間違えた時、②は多く間違えた時によく見られました。このことから、カラスの間違えは、最初の発声回数計画そのもののエラーというよりも、途中で計画から外れてしまった場合に起こることが示唆されました。

研究者たちは、「原理的には、カラスは数を使った高度なコミュニケーションが可能である」と語っています。

3月から7月はカラスの繁殖期です。日本でも、子育て中に普段よりも神経質かつ凶暴になったカラスがニュースを賑わせています。むやみに刺激してカラスの恨みを買ったり、開けやすいゴミ袋を家の前に放置したりすると、「2つ先の角の家を襲撃しよう」と仲間に鳴き声で伝えられてしまうかもしれませんね。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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