コラム

日本でも緊急避妊薬が薬局で買えるようになる? 試験販売決定の意義と問題点

2023年07月04日(火)18時05分

また、潜在的な使用者は、性被害者だけではありません。パブリックコメントで「パートナーと良好な関係であっても望まないタイミングでの妊娠を回避したい女性はいるので、緊急避妊薬のニーズは大きい」という意見があったように、緊急避妊薬は女性のキャリア計画の強い味方となりそうです。

23年2月には、米コーネル大グループが精子の動きを一時的に止める薬の実験をマウスで成功させてニュースになりましたが、ヒトの男性用の経口避妊薬に応用するためには時間がかかります。研究チームは8年後の製品化を目指すと語っています。

日本は23年の世界男女格差報告書では男女平等度が146カ国中125位、SDGs達成度ランキングでは目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に「深刻な課題がある」と評価されています。緊急避妊薬のOTC化が進んで普及率が増加すれば、社会におけるジェンダー格差の是正にも貢献するでしょう。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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