最新記事
世界のニュース50

精子を静止させる避妊薬開発へ 1時間で効き目、2時間後なら100%避妊...その仕組みは?

2023年5月15日(月)11時10分
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
精子

(写真はイメージです) ninoon-shutterstock

<米コンサルティング会社は「バイアグラ発売時の3倍の普及率になる可能性がある」と予測>

男性用避妊薬の開発がなかなか進まないなか、米コーネル大学医学部のチームは今年2月、一時的に精子の動きを止める薬を発表した。

精子が卵子に向かって泳ぐのを助ける酵素「可溶性アデニリルシクラーゼ(sAC)」を阻害して避妊効果を得る。飲むと1時間ほどで効き目が表れ始め、2時間後なら100%避妊できるという。翌日には薬の効果が切れ、精子は元どおりに動けるようになる。

今のところマウスの実験で成功しただけだが、研究チームは3年以内に人間で臨床試験を行い、8年後の製品化を目指すという。最終的な目標は、1時間以内に効いて、6~12時間は妊娠を防いでくれる非ホルモン性の男性避妊薬の開発だ。

sACに問題がある男性は腎臓結石になりやすいが、この避妊薬は一時的に作用するだけなので大きな問題はないとされる。実験マウスにも副作用は見られなかった。

手軽で即効性があり、必要なときにだけ効果を発揮するだけでなく、パートナーの目の前で男性が避妊薬を飲んで信頼を得られるのが大きなメリットだろう。「バイアグラ発売時の3倍の普及率になる可能性がある」と予測する米コンサルティング会社もある。

weboriginak20210521baeki-profile2.jpg[筆者]
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト)
東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専攻卒業。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)、獣医師。朝日新聞記者、国際馬術連盟登録獣医師などを経て、現在、立命館大学教員。サイエンス・ライティング講座などを受け持つ。文部科学省COI構造化チーム若手・共創支援グループリーダー。第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。デビュー作『馬疫』(光文社)を2021年2月に上梓。

企業経営
ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パートナーコ創設者が見出した「真の成功」の法則
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アメリカ経済学会、サマーズ元財務長官を活動から排除

ビジネス

豪インフレ、予想以上に長期化なら金融政策に影響も=

ワールド

「戦争の恐怖」から方向転換を、初外遊のローマ教皇が

ワールド

米ブラジル首脳が電話会談、貿易や犯罪組織対策など協
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 5
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 6
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中