最新記事

精子

アメリカ人男性の精子の質が低下している

American Men, Your Sperm Is Getting Worse and Scientists Don't Know Why

2021年10月26日(火)18時27分
エド・ブラウン
精子イメージ

男性の精子は数が減り弱ってきている Rost-9D-iStock.

<西側男性の精子の数が減っているのに加え、アメリカ人の精子の質も落ちていることがわかった>

米国人男性の精子の質は過去15年間にわたって下がり続けていると指摘する研究結果が報告された。理由は不明だが、環境に流出した化学物質が一因になっている可能性もあるという。

精子の質の低下という話題自体は、特に新しいものではない。2017年には、西側の男性の精子の数が、1973年〜2011年までに50%以上減少したとする大規模調査の結果が判明し、世界各国のメディアに大きく取り上げられた。この研究は、精子減少の原因について早急な調査を呼びかけたが、一方ではその内容をめぐってさまざまな批判にも直面した。

そして今、より最近の長期調査により、再び精子にスポットライトが当たっている。

今回の研究では、9つの異なる地域に住む精子提供者から、2005年1月〜2021年4月にかけて採取された精液のサンプルを調査した。

16年間を通じて減少傾向

全体では、17万6706件の精液サンプルが、3532人の男性から提供された。提供者の年齢は19〜38歳。居住地は、カリフォルニア州、インディアナ州、マサチューセッツ州、ニューヨーク、テキサス州、ワシントン州などの他、デンマークに拠点を置く精子バンク「国際ノルディック・クライオバンク・デンマーク」からも精子が提供された。

これらの精子サンプルを分析する上で、研究チームは4つの主要な指標に着目した。「射精量」、「精子の平均濃度」、「運動性(正常に泳ぎ回ることができる能力)」、そして「運動精子の総数」だ。

その結果、この4つの指標のうち3つに関して、米国人の精子の質が大幅に低下していることが判明した。平均濃度、運動性、運動精子の総数の平均値は、いずれも16年にわたる調査期間を通じて低下傾向にあった。インディアナポリスだけは、濃度と運動精子数は減少したが、運動性は上昇した。一方、射精量には有意な減少は認められなかった。

この研究結果は、論文執筆者の1人で、ニューヨーク市にあるマウントサイナイ医科大学に所属する不妊治療の専門家チェルシー・キャノンによって、10月17日〜20日に開催されたアメリカ生殖医学会(ASRM)で発表された。

研究チームによると、精子の質の低下を招いた要因が何かは定かでないという。ただし、以前の研究では、環境および生活習慣の要素が、精子の質低下に関わっているという説も提唱されている。

学術誌ヒューマン・リプロダクションに2001年8月に掲載された研究論文は、アルゼンチンのリトラル地方南部に住む、交際相手を持つ225人の男性を対象に調査を行った。論文によると、この地域は当時、世界でも最も生産量の多い農業地域のひとつだったという。調査対象となった男性たちは、1995年〜1998年の間に、不妊相談に出席した人たちだった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、11月CPIが予想下回る 

ビジネス

トランプ氏、FRB議長候補のウォラー理事と面会 最

ワールド

トランプ氏、大麻規制緩和の大統領令に署名 分類見直

ワールド

米政権、ICC判事2人に制裁 イスラエルへの捜査巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 9
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中