コラム

H3ロケット「中止か失敗か」論争、若田宇宙飛行士の船外活動 2つのJAXA記者会見に参加して思うこと

2023年02月21日(火)12時20分

とはいえ、記者会見に予想外はつきものです。チームワークについては若田さんが最初の挨拶や先の質疑応答で多く語ったため、急遽、宇宙でのサステイナブルな生活技術と地球での活用について尋ねました。若田さんは、ISSの日本の実験棟「きぼう」では汗や尿を用いた水再生装置を使っていることを紹介し、この技術は将来の有人宇宙活動を推進し、地球でも緊急時に使える技術なので地球全体のSDGsにも役立つと見解を述べました。

さらに、全体的に思ったよりも船外活動そのものの話が少なかったため、2周目の締めをこの話題にして、「船外活動で宇宙服を着ているとはいえ生身を宇宙空間に晒し、どんなことを感じたか。恐怖や畏怖はあったか」を尋ねました。若田さんの答えは「恐怖や畏怖はなかった。宇宙服を介して外は真空の世界で厳しい環境であるという緊張感はあったが、一つ一つ冷静に自分が行うべきことを確実にやることに集中した」でした。宇宙飛行士の強靭なメンタルと、ミッション達成への責任感を垣間見ることができました。

失敗ではなくフェールセーフ

記者会見の質問は瞬発力が求められることも多く、多くの読者を代弁するつもりでも、自分の見解が先立つように見えることがあります。ネットで炎上気味になった「H3ロケットの記者会見で、失敗と指摘する台詞」に対して、論破王として知られる2ちゃんねる創始者のひろゆきさんはツイッターで引用し、十八番の台詞「それって、あなたの感想ですよね」と返しています。

ちなみに、今回の打ち上げに関する筆者の感想は、「ロケット本体や搭載した地球観測衛星『だいち3号』が、損失したり制御不能になったりするのが失敗。今回は、フェールセーフ(装置の故障や誤操作を想定し、安全に動作を止めて被害を最小限に抑える仕組みが働くこと)。安全に停止して、貴重な観測データが取れる『だいち3号』を守ってくれてありがとう」です。年度内の再打ち上げ成功を期待しています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

東京センチュリー、無担保社債で10億ドル調達 航空

ワールド

ロ外相「米が国際秩序破壊」、ベネズエラ攻撃やイラン

ワールド

米上院共和、対ベネズエラ軍事行動制限案の審議阻止 

ワールド

トランプ氏、イラン元皇太子が国内で支持得られるか不
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広がる波紋、その「衝撃の価格」とは?
  • 3
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救った...実際の写真を公開、「親の直感を信じて」
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 9
    年始早々軍事介入を行ったトランプ...強硬な外交で支…
  • 10
    宇宙に満ちる謎の物質、ダークマター...その正体のカ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 6
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 7
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 10
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story