コラム

汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏最新インタビュー

2024年05月27日(月)14時40分

【AI秘書?デジタルツイン?AI幹部?】

(19:21)
常に自分の近くにいて、煩雑な操作が一切ない、そんなAIが欲しい。そういったAIに関しては二通りの考え方があって、1つは自分の延長のようなAI。自分と同じように考えて、自分の代わりにメールの返事を書いてくれたりする。もう1つの考え方は、優秀な経営幹部のようなAI。ほとんどの仕事を任せられるが、自分の延長ではない。自分と違う意見を表明したり、反論してくることもある。イエスマンではない。そんなAIを作りたいと思う。

【AIが大きく変える領域】

(25:52)
注目しているのは教育。家庭教師AIで教育は大きく変わると思う。自分の興味のあることを上手に教えてくれるような家庭教師AIサービスを作ることができて、人々がいろんなことをどんどん学んでいけるようになれば、それはものすごい発明になると思う。

あとはプログラミングの領域もそうだし、ヘルスケアにも注目している。でも一番エキサイティングなのが、科学の領域の発明、発見だ。今必要なのは、論理的思考能力を持った汎用AI。それができれば化学シミュレーターに繋げればいいだけ。科学のための別のアーキテクチャはいらない。(湯川解説:やはり汎用AIがすべての解決策と考えているようだ)

【汎用AIか特化型AIか】

(31:34)
もちろん特定の領域に特化したシミュレーターやコネクター、データセットは必要だが、論理的思考ができるようになれば、特化型モデルは不要だと思う。根拠はないんだが、そんな風に思う。Soraはまだ動画生成特化型モデル。論理的思考が十分に進化していないから作るしかなかった。まだ言語モデルはオートリグレッションモデルだし、画像モデルはデフュージョンモデルだ。まだまだ進化が必要だ。(湯川解説:言語モデルと画像モデルでは別のアーキテクチャーを使っているという話。汎用AIは、1つのアーキテクチャーで言語モデル、画像モデルよりも性能がよくなるはずだという)。

【データのフェアユース】

(34:15)
いろいろな考え方がある。例えば音楽生成AIを作るときにテイラースイフトの楽曲で学習した場合は、テイラースイフトにライセンスフィーを支払うべきだと考える人が多い。ではテイラースイフト以外の楽曲で学習したAIに、テイラースイフトが書くような楽曲を生成してと命令して、テイラースイフトっぽい楽曲を生成した場合はどうだろう。テイラースイフトの曲を学習したことがなくても、「テイラースイフトはポップな音楽を歌う女性アーチスト」というテキストデータがあるだけで、AIはテイラースイフトのような楽曲を生成するかもしれない。その場合はどうすればいいんだろう。個人的には、そういう場合はテイラースイフトにライセンスフィーを支払う必要はないと思う。ただこの辺りはまだ社会として合意に達していない。社会的合意に達していないので、われわれが音楽生成AIを手掛けることは当面ない。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中朝首脳が会談、戦略的な意思疎通を強化

ビジネス

デジタルユーロ、大規模な混乱に備え必要=チポローネ

ビジネス

スウェーデン、食品の付加価値税を半減へ 景気刺激へ

ワールド

アングル:中ロとの連帯示すインド、冷え込むトランプ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story