コラム

人工知能の未来を読みたければNVIDIAの動きを追え

2016年11月22日(火)17時05分

エヌビディアのジェンスン・ファンCEO Mike Blake-REUTERS

<大量のデータを並列処理するコンピュータゲームの画像処理チップに目をつけ、AI用半導体チップを開発し、AIのパワーアップとコンピューティングコストの大幅減を実現したエヌビディアは、AI産業革命の起爆剤になるか>

 半導体メーカーNVIDIA(エヌビディア)が人工知能(AI)革命の立役者として産業界の注目を集め始めた。同社のパートナー企業の顔ぶれを見るだけで、これからどの業界に変化の波が押し寄せるのかが予測できそう。その裾野は広く、まさに革命前夜の様相を呈している。

世界最大級見本市の来年の基調講演に

 毎年1月に米ラスベガスで開催される世界最大級の家電見本市Consumers Electronics Show(CES)の2017年の基調講演が、NVIDIAのCEOのJen-Hsun Huang(ジェンスン・ファン)氏に決まった。

 CESは1967年に始まった歴史ある家電見本市。基調講演は毎年、有力家電メーカーのトップが行うことが慣例だったが、2000年にMicrosoftのBill Gates氏を初めて基調講演に招いた。家電におけるパソコン技術の重要性を印象付けた基調講演となった。

 そして年明けのCES2017の基調講演に、NVIDIAのトップが招かれることになった。NVIDIAはもともとはコンピューターゲームが主要用途だったGraphics Processing Unit(GPU)と呼ばれる半導体で頭角を現してきたメーカーだが、最近ではAI用半導体チップメーカーとして脚光を浴びている。

 家電を牽引するのが、パソコン技術からAI技術へと移行しつつある。そのことを印象づけるような人選だ。

2011年、GPUがディープラーニングの進化を加速させた

 パソコンの頭脳といわれる半導体チップはCPU(Central Processing Unit)。CPUは計算式を1つ1つ順番に処理するタイプの半導体だ。

 一方でGPUはグラフィック処理に特化した半導体チップで、幾つもの計算式を同時に並列に処理できるのが特徴。人間の脳は、何十億個ものニューロンが電気信号をやり取りしている。膨大な並列処理が行われているわけだ。それを真似るには、並列処理が得意な半導体のほうがいい。

 最初にGPUの可能性に着目したAI研究者は、スタンフォード大学のAndrew Ng氏だと言われる。これまで2000個のCPUを使って解いていたディープラーニングの計算を、Ng氏は2011年にわずか12個のNVIDIAのGPUで実行した。それから世界中のAI研究者がNVIDIAのGPUを使うようになった。低コストでディープラーニングの研究開発が行えるようになったため、ディープラーニングはいろいろな領域で次々と成果を挙げ始めることになる。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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