コラム

Microsoftをなめるなよ! モバイルの次の覇権はAIでゲットだぜ !!

2016年08月18日(木)16時36分

 同氏の読み通りに時代が移行するのかどうか。チャットボットがコンピューティングを変えるようになるのかどうか。この段階ではまだまだ分からないが、賭ける領域としては非常におもしろい領域だと思う。

 というのは、これまでのテック業界の主戦場の変化をキーワードで表現すると、「検索」から「ソーシャル」へと移行し、さらには「モバイル」へと移ってきた。今はモバイルの中でも、SNSからメッセンジャーへと主戦場が移行し始めている。米国では昨年ぐらいからSNSサイトよりもメッセンジャーの利用が多くなっているという。FacebookメッセンジャーやLINEといったメッセンジャーにユーザーが集まり、メッセンジャーをベースに業界全体が動こうとしているわけだ。

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■ソーシャルメディアを抜いたメッセンジャーアプリ(月間のアクティブユーザー数)

 この動きになんとか追いつこうとGoogleは、新たなメッセンジャーのプロジェクトに乗り出すようだが、Microsoftはその次のパラダイムを見据えている。それがチャットボットだ。

 今は多くのユーザーがパソコンのウェブサイトやモバイルアプリで行っているほとんどの行為が、メッセンジャー上のチャットボットという形で可能になると言われている。アプリをダウンロードする必要もなく、より手軽に、秘書に話かける感覚で、情報を調べたり、レストランを予約したり、航空券を購入できるようになる。それがNadella氏が考えるコンピューティングの次のパラダイムだ。

【参考記事】進化するバーチャル・アシスタントとの付き合い方

 今は日本のテック企業の関係者だと例えば、家族、友人とはLINE、会社内だとSlack、社外のつきあいはFacebookメッセンジャーもしくはメール、といった具合に、コミュニケーション手段が幾つも存在している。非常に面倒だ。しかしすべてのコミュニケーション手段に、秘書的な共通チャットボットを乗せておけば、ユーザーはこのチャットボットとだけ、やり取りするだけで、すべてのコミュニケーション手段の情報を取りまとめられるようになる。

 チャットボットは複数のユーザー間の情報の取りまとめも、得意とするところだ。メッセンジャーの家族のグループにチャットボットを参加させておけば、旅行に行きたい場所、したいことなど、各人の要望を考慮して、日程を調整した上で、旅行の行程やホテルの提案をしてくれるようになるだろう。

 こうなればチャットボットは、よりユーザーに近い場所を取ることになるわけで、メッセンジャーは単なるインフラになってしまう。

 主戦場がメッセンジャーから、チャットボットに移行するわけだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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