コラム

Microsoftをなめるなよ! モバイルの次の覇権はAIでゲットだぜ !!

2016年08月18日(木)16時36分

 2つ目の根拠は、CEOが変わったから。前CEOのSteve Ballmer氏は、創業者Bill Gatesの意思を踏襲した経営者だった。Windowsのシェアを脅かすLINUXに対しては敵意を丸出しにし、「LINUXは触れるものすべての知的所有権にくいつく癌である」と非難したことで有名だ。

 Ballmer氏に代わって2年前にCEOに就任したSatya Nadella氏は、Ballmer氏と真逆の戦略に乗り出した。Ballmer氏があれほど敵対視していたLINUXのサポートを決めただけでなく、Windowsという過去の成功体験からくるプライドをかなぐり捨てて、新しい領域に果敢に挑戦し始めている。クラウド・コンピューティングや、VR、AIなど、新しい領域での同社の評判は上々だ。

 この新しいCEOが、基礎研究の成果を使って新しい事業領域に乗り出そうとしている。その動きを支えるのが、Windowsのインストールベースと幅広い顧客層。3つ目の根拠だ。

 テック・ニュース的には「過去の企業」扱いされても、腐っても鯛。ビジネス界における影響力はいまだに半端ない。どれだけ優秀な頭脳を集めたベンチャー企業でも、ビジネス界における影響力ではMicrosoftの右に出ることろはないだろう。

 この3つの条件を揃え持つMicrosoftが、AIの領域に全力で向かい始めた。特にビジネス向けのチャットボットで、時代の最先端に躍り出ようという考えだ。

【参考記事】カスタマーサポートでチャットボットの普及が見込まれる理由

 7月にカナダで開催されたMicrosoftのパートナー向け総会で、CEOのNadella氏は「チャットボットはコンピューティングを根本から革命的に変える」と語っている。「今は、ボットはアプリを補完する感じだが、いずれ自然言語がすべてのコンピュータの新たなインターフェイスになる」というのが同氏の予測だ。「モバイルアプリであれ、PCソフトであれ、ウェブサイトであれ、すべての開発者は今後、新しいインターフェイスとしてボットを開発するようになるだろう。対話型UIがプルダウンメニューに取って代わるだろう」とまで語っている。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア産肥料を米企業が積極購入、戦費調達に貢献と米

ビジネス

ECB、利下げごとにデータ蓄積必要 不確実性踏まえ

ビジネス

ソニー、米パラマウントに260億ドルで買収提案 ア

ビジネス

ドル/円、152円台に下落 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story