コラム

現代安全保障のパラドクス...テロに悪用されるAIにより世界が直面する危機

2025年04月10日(木)16時45分

【今後の展望】

AIとテロリズムの関係は、技術の進歩と悪用の可能性が表裏一体であることを示している。テロ組織がAIを活用する動機は明確である。低コストで高効率な攻撃手段を獲得し、国家の防御網を突破する能力を強化できるからだ。しかし、彼らの技術的限界も無視できない。

高度なAI開発には専門知識とリソースが必要であり、多くのテロ組織はこれを欠いている。それでも、オープンソースAIや市販技術の普及により、参入障壁は低下しつつある。


国際社会の対応は、予防と抑止の両面で強化が必要である。技術規制は重要だが、過度な制限はイノベーションを阻害し、経済的競争力を損なうリスクがある。

むしろ、AIを活用した積極的な防御戦略--例えば、テロリストの行動パターンを予測するAIモデルの開発--が現実的である。同時に、市民のプライバシーと自由を保護する法制度の整備が急務である。

結論として、AIとテロリズムの交錯は、現代の安全保障におけるパラドクスである。技術の恩恵を享受しつつ、その悪用を防ぐためには、国家、民間企業、市民社会が協調し、適応的な戦略を構築する必要がある。

2025年4月時点で、この課題は未解決のままであり、今後の技術進化と国際協調の進展が鍵を握るだろう。

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プロフィール

和田 大樹

株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、清和大学講師(非常勤)。専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論など。大学研究者として国際安全保障的な視点からの研究・教育に従事する傍ら、実務家として海外進出企業向けに政治リスクのコンサルティング業務に従事。

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