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アメリカ経済は誰のものか?...トランプの答えは「俺のもの」【note限定公開記事】

A Monarchical Economy

2025年9月3日(水)18時01分
ハワード・フレンチ(コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授)
ポップアート調で描かれたトランプ大統領風の男性。アメリカ国旗を背に瓦礫の上で旗を掲げる姿

ILLUSTRATION BY ROGISTOK/SHUTTERSTCOK

<関税で政府の懐を肥やし、民間企業からも収益を巻き上げる。だが、そこにあるのは戦略なき介入であり、「国家資本主義」と呼ぶには到底及ばない>


▼目次
1.批判も追いつかない、トランプの「忙しすぎる」政治
2.自由市場を壊す大統領
3.個人の嗜好が経済を動かす

1.批判も追いつかない、トランプの「忙しすぎる」政治

ビジネス(business)ではなくビジーネス(busyness:忙しさ)。

2期目のドナルド・トランプ米大統領の激烈なスタートダッシュを理解するキーワードはこれだ。

熱烈な支持者たちは拍手喝采の連続で、きっと手が腫れ上がっている。

それ以外の人たちも大変だ。意表を突かれ、まさかの展開に戸惑い、息を切らしている。

トランプの連発する大統領令やSNSで発する宣言・意見は過激になる一方だし、それが世間でニュースになる頃には早くも別のテーマに移っているから、まともな批判や反論をする時間がない。

アラスカにロシアのウラジーミル・プーチン大統領を招いて即興の首脳会談を開いたかと思えば、奴隷制に焦点を当てすぎているとしてスミソニアン協会を攻撃した。

首都ワシントンには州兵を動員して警察を掌握。6月の米軍によるイラン核施設攻撃の効果は限定的だとする初期評価を国防情報局が示すと、すかさず同局トップを解任した。

テキサス州など、共和党が多数を占める州で党に有利な選挙区割りの変更「ゲリマンダー」を推進する一方、司法省の副長官に自身の刑事弁護人だった人物を送り込み、ジェフリー・エプスタイン事件で収監中のギーレイン・マクスウェル受刑者がトランプに有利な証言をした聴取記録を公開させた。

第1次トランプ政権で大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めたが今はトランプに批判的なジョン・ボルトンの自宅には、FBIの捜査員を送り込んだ。

これら全てが、ほんの2週間ほどで起きている。

どれも国民的議論が沸き起こって当然の問題だが、リアリティー番組の司会で鍛えたトランプは国民にも議会にも議論の隙を与えずに突き進む。

2.自由市場を壊す大統領

まあ、ここまでは想定の範囲内と言えなくもない。問題は経済政策だ。

トランプは過去80年にわたりほぼ無傷で維持されてきたアメリカの経済システムの根幹を揺るがしている。

その正当性や論理的根拠を問う声が伝統的な保守派や大企業、富裕層から上がってもおかしくないはずだが、なぜかみんな沈黙している。

いわゆる「自由市場型資本主義」なるものを、たいていのアメリカ人は信じてきた。ところが今は、政府がそれを乱暴に破壊しようとしている。

もちろん「自由市場型」というレッテル自体にいかがわしさはあるのだが、それが第2次大戦以降のアメリカの政治経済の看板であったことは事実。

とりわけ共和党政権は、国富の源は民間の企業にあり、国家の役割は安定した政策環境の維持にあると論じてきた。

そして、それを維持するには透明性と独立性を兼ね備えた政府機関が必要で、行政府の政治的な気まぐれに左右されてはいけないと信じてきた。

ところがトランプはこの独立性が気に入らない。

だから独立性の高いFRB(米連邦準備理事会)のジェローム・パウエル議長に辞任圧力をかけ、民主党政権時代に指名されたFRB理事を一方的に解任したりしている。

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なかなか利下げ圧力に屈しないFRBのパウエル議長をトランプは執拗に攻撃してきた JONATHAN ERNST―REUTERS

トランプから執拗な個人攻撃を受け、利下げを求められてきたパウエルは8月22日に、9月には利下げに転じる可能性を示唆した。

すると株価は急騰したが、多くのアナリストは金利の決定に大統領が干渉するのは米経済に悪影響を及ぼすと懸念している。

自由市場型資本主義の根幹を揺るがす政策はもっとある。

◇ ◇ ◇

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【note限定公開記事】アメリカ経済は誰のものか?...トランプの答えは「俺のもの」


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