最新記事
パレスチナ

ハマスとイスラエル暴力の悪循環は、米中が協力して中東和平を推進するチャンスも生んでいる

ISSUES 2024: MIDDLE EAST

2023年12月20日(水)10時45分
チャールズ・カプチャン(米ジョージタウン大学教授)

今回の戦争の結果、ガザと西岸とイスラエルで同時に政治的変化が進めば、新たな考え方につながる可能性がある。ガザでは反ハマスムードの高まりとともに、イスラエルのハマス壊滅作戦が恐らくハマスの支配を終わらせるだろう。西岸ではパレスチナ自治政府が支持率低迷にあえいでいる。

選挙は2006年を最後に以降一度も実施されず、マフムード・アッバス議長は任期4年を過ぎ、87歳の今も権力の座に居座っている。2年前の調査ではパレスチナ人の約80%が議長を退任すべきだと回答した。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相も同様だ。イスラエル史上最悪の1日は彼の監視下で起きた。国家の安全を保てる唯一の指導者としての足場を固めてきただけに大打撃だ。

確かに、ガザと西岸とイスラエルで同時に政権交代が起きる可能性があると、先が見えない状態が長引き、さらに過激な勢力が台頭しかねない。だが、和平実現に意欲的な指導者が誕生する可能性もある。

米中の協力にも期待がかかる

今回の戦争の波紋は中東以外にも及ぶ。だからこそアメリカと国際社会は外交に力を入れているのだ。国際社会は中東への関与を強め、死に体の和平プロセスを復活させなければならない。

従来、アメリカの外交官は2国家共存の必要性に言及はしても、ほとんど口先だけだった。だが現在はイスラエルとパレスチナの紛争を注視、10月18日にはジョー・バイデン米大統領自らイスラエルのテルアビブを訪問した。今回の戦争が終結したら、中東和平交渉を進めるべきだ。

今回の戦争はアメリカと中国が協力して和平プロセスを推進するチャンスを生んでいる。米中両国は地政学的競争を緩和する方法を模索する手始めとして、協力して和平推進に一役買うといいかもしれない。

中国の外交的関与はイランを抑え込むために特に重要だ。イランはハマスやレバノンのヒズボラといったイスラム過激派組織に資金と武器を提供している。中国はイランの最大の貿易相手国でイランにかなりの影響力を持つ。一方、国際社会で孤立するイランにとって中国は外交上の頼みの綱だ。

サウジアラビアとイスラエルの関係正常化交渉は死んではいない。米中は中東の大国と連携し、宗派間の対立をあおり、反イスラエル勢力をたき付け、中東全域で問題を起こそうというイランの意欲(と能力)をそぐことができるかもしれない。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ブラックストーン、「めちゃコミ」運営のインフォコム

ビジネス

シェル、LNG会社パビリオン・エナジー買収へ テマ

ワールド

タイ裁判所、タクシン元首相の保釈許可 王室に対する

ワールド

豪中銀が政策金利据え置き、追加利上げ排除せず イン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サウジの矜持
特集:サウジの矜持
2024年6月25日号(6/18発売)

脱石油を目指す中東の雄サウジアラビア。米中ロを手玉に取る王国が描く「次の世界」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は「爆発と強さ」に要警戒

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    えぐれた滑走路に見る、ロシア空軍基地の被害規模...ウクライナがドローン「少なくとも70機」で集中攻撃【衛星画像】

  • 4

    800年の眠りから覚めた火山噴火のすさまじい映像──ア…

  • 5

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 6

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 7

    中国「浮かぶ原子炉」が南シナ海で波紋を呼ぶ...中国…

  • 8

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 9

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 10

    水上スキーに巨大サメが繰り返し「体当たり」の恐怖…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は…

  • 5

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 10

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中