最新記事

トルコ

「これ以上住み続けることはできない...」トルコの若者たちの国外脱出が止まらない

2023年2月2日(木)11時04分
ステファニー・グリンスキ(ジャーナリスト)
イスタンブール

エルドアン政権が続く限りトルコの未来に希望を持てない?(イスタンブール) ERHAN DEMIRTASーNURPHOTO/GETTY IMAGES

<次第に専制主義的傾向を強めたエルドアン政権に対し、若く有能な人々が「国外移住」という形で「ノー」を突き付ける。今年5月に大統領選挙が予定されているが、その結果は?>

トルコ人のデータサイエンティスト、ブルット・フィチジ(25)は、ヘッドハンティングの声が掛かったとき、全く迷わなかった。1年ほど前、オランダの会社に移籍するために、トルコのイスタンブールを離れた。

「トルコは好きだけれど、イスタンブールのような都市にこれ以上住み続けることはできなかった。政治も経済も悪くなる一方だった」と、フィチジは言う。

5月14日に予定されている大統領選と議会選を前に、多くのトルコ国民が国外移住という形でトルコの現体制にノーの審判を突き付けている。

国外移住者たちは、政府への不信、言論の自由に対する弾圧、インフレの進行、ビジネス環境の悪化などを移住の理由として挙げる。

コンラート・アデナウアー財団(ドイツ)が2021年に実施した調査では、トルコの18~25歳の70%以上がほかの国で暮らしたいと考えていて、60%以上がトルコの未来を悲観している。

若者だけではない。最大野党・共和人民党が21年に発表した報告書によると、21年までの3年間に、1万人のミリオネアを含む2万3000人のビジネスパーソンがトルコを出て行った。

20年のデータでは、トルコからの資本流出は440億ドルに達している。12年の40億ドルから10倍以上に増えた計算だ。

03年にエルドアン大統領が首相として権力を握った当初、トルコの未来はもっと明るく見えていた。トルコ経済は好調で、失業率も低下していた。

しかし、エルドアン政権下のトルコは次第に専制主義的傾向を強めていったと、ロンドン・メトロポリタン大学の政治学者アフメト・エルディ・オズテュルクは指摘する。

「国外移住の増加が加速し始めたのは、13年にイスタンブールのゲジ公園で行われた反政府デモが強制的に排除され、16年のクーデターが失敗した後だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

PIMCO、金融緩和効果期待できる米国外の先進国債

ワールド

AUKUSと日本の協力求める法案、米上院で超党派議

ビジネス

米国株式市場=ダウ6連騰、S&Pは横ばい 長期金利

ビジネス

エアビー、第1四半期は増収増益 見通し期待外れで株
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中