最新記事

教育

教員不足で懸念される公教育の「質の低下」

2023年1月18日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

こうなると、新規採用教員の質の懸念も持たれる。文科省の委託調査によると、小学校の20代教員の26%が「出身大学の入学難易度は高くない」と答えたそうだが、さもありなんだ(朝日新聞、2022年11月28日)。

日本の教員養成は「開放制」の原則に立っていて、教員養成大学以外の一般大学(私立大学)でも教員免許状を取得できる。この一般大学出身者が新規採用教員の中でどれほどの割合を占めるかは、<図2>を見ると分かる。

data230118-chart02.png

90年代までは、新規採用教員の半分以上を国立教員養成大学出身者が占めていたが、近年では一般大学(私立大)出身者が6割を占めている。採用試験の難易度低下により、合格者の裾野が広がっていることが見て取れる。

新たに教員となる者の学力の幅は広がっていることだろう。学力が同世代の中央値にも満たない者が教壇に立っているかもしれない。今の学校には、以前では入っていなかったような層が入職するようになっている。

教員志望者を闇雲に増やすことだけでなく、優秀な若者を呼び寄せることも考えなければならない。まず求められるのは教員の働き方改革だが、教員になるための経済的障壁を除くのも手だ。国立の教員養成大学の学費を下げる、ないしは教員志望者向けの給付奨学金を創設するのはどうか(戦前の師範学校は学費が無償で、生活費も支給されていた)。優秀であっても、経済的理由で教職への道を断念する若者もいるだろう。

<資料:文科省『公立学校教員採用選考試験の実施状況』

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国のレアアース輸出、新規ライセンス第1弾発給=関

ビジネス

英中銀、銀行の自己資本比率要件を1%引き下げ 経済

ビジネス

りそなHD、社内DXに100億円投資 「生成AIも

ビジネス

パナ、データセンター蓄電の28年度売上8000億円
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 3
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 4
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中