最新記事

教育

教員不足で懸念される公教育の「質の低下」

2023年1月18日(水)11時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
小学校教室

学校によっては教育活動が機能しなくなるレベルの教員不足が起きている recep-bg/iStock.

<教員の過重労働がすっかり認知されていることもあってか、採用試験の受験者数は年々減少している>

東京都は、教員採用試験の筆記試験を大学3年生でも受験可能にするという。4年の夏に集中していた負担を分散しようという趣旨だ。こうした例は珍しいが、試験の実施時期を早くする、試験を年2回(夏・秋)実施するなど、教員採用試験の改革が各地で行われている。試験を受けやすくし、教員志望者を少しでも増やすのが狙いだ。

若者の絶対数が減っていることに加え、教員の過重労働も知れ渡ってか、教員採用試験の受験者は年々減少している。「子どもも減っているのだから、問題ないではないか」と言われることもあるが、そうした楽観を許さぬほど事態は深刻だ。学級担任がいないなど、学校の教育活動が機能しなくなる「教員不足」が起きている。

公立学校の教員は自治体ごとに採用されるが、東京都の教員採用試験の受験者数の推移をたどってみると<図1>のようになる。

data230118-chart01.png

受験者数は2013年度の採用試験(試験は前年夏実施、以下同じ)では1万7326人だったが、5年後の2018年度では1万3335人になり、さらに5年後の2023年度では7911人となっている。この10年間で半減だ。民間の就職機会が多いこともあってか、東京では教員志望者の減少が著しい。冒頭で記したような改革も必要なわけだ。

一方、名簿登載者数(合格者数)は横ばいで、近年は微増の傾向にある。受験者数と合格者数の折れ線はどんどん接近し、試験の難易度は下がってきている。2023年度の受験者は7911人、名簿登載者は3841人。合格率は49%、2人に1人が受かる状況だ。小学校に限ると合格率は7割にもなる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

首相指名は1回目から高市氏に投票、今夕に合意文書調

ビジネス

中国GDP、第3四半期は前年比+4.8% 1年ぶり

ワールド

トランプ氏「大規模」関税続くとインドに警告、ロ産原

ワールド

中国、李成鋼氏を通商交渉官に正式任命 ベセント氏が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 6
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 9
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中