最新記事

インドネシア

バリ島への婚前旅行は厳禁に! 政府の侮辱や黒魔術も禁じる刑法改正案が可決

2022年12月6日(火)19時38分
大塚智彦
リゾートホテルのプールを眺めるカップル

カップルにとってバリ島は地上の楽園ではなくなる? Panuwat Dangsungnoen - iStockphoto

<イスラム教の影響が強いインドネシア、外国人も含めて婚前の性交や同棲を禁止に>

インドネシア議会は11月6日、刑法改正案を可決した。改正案では結婚していない男女による性交や同棲を禁じるほか、大統領や副大統領の尊厳を損なったり、州政府などを侮辱すること、さらには黒魔術の禁止というものまでも含まれており、人権団体などから激しい反対運動が起きている。

世界第4位の人口約2億6000万人のうち約88%がイスラム教徒という世界最多のイスラム教徒人口を擁するインドネシアでは、イスラム教を国教とはせず、キリスト教、仏教、ヒンズー教、儒教の信仰も憲法で保障された多様性の国家である。

しかし圧倒的多数を占めるイスラム教の規範や禁忌、習俗などが政治・経済・社会・文化のあらゆる側面で「優先」されることが多く、それに伴う軋轢や人権侵害事案も多発しているのが現実だ。

今回の刑法改正はオランダの植民地時代に制定された旧法を現代の社会状況に適合させる必要性が求められ、1946年頃から議論が始まり、2019年から国会で本格的に審議されてきたが反対派や国民の間で人権侵害を助長するとして見送られてきた経緯がある。

今回は国会の全政党・会派が賛成に回り懸案の刑法改正がようやく実現した。

婚外性交や同棲も禁止

しかし改正刑法ではこれまで禁止されてきた婚外性交以外に、結婚していない男女の婚前性交や同棲まで禁止され、違反者には6カ月から最長1年の禁固刑が言い渡される可能性がある。

この条文は外国人にも適用されるため、観光産業や投資に影響が出ると経済界などは懸念を表明しているほか、性的少数者であるLGBTQの人権侵害にも関わる可能性が指摘されている。

こうした刑法改正に伴う数々の規制はイスラム教の影響を受けた結果と指摘されており、圧倒的多数の力に後押しされたことは否めない。

イスラム法が唯一適用されているスマトラ島北部のアチェ州では、婚外に加えて禁止されている婚前性交で摘発された男女は公開のむち打ち刑に処されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中