最新記事

労働

欧米の金融機関、進まぬ出社再開 オフィスワークの魅力向上にあの手この手

2022年9月9日(金)09時27分
ロンドンの金融街の公園でくつろぐ人々

欧米の金融機関では、コロナ禍で在宅勤務が当たり前になった従業員に出社を促している。ロンドンの金融地区で5月撮影(2022年 ロイター/Hannah McKay)

欧米の金融機関では、コロナ禍で在宅勤務が当たり前になった従業員に出社を促している。だが、通勤の負担などが足かせとなり、職場復帰は遅れぎみだ。打開策として金融機関は無料で食事を提供したり、卓球台や「瞑想的な空間」を備えたりと、オフィスの魅力向上に躍起となっている。

金融業界では新型コロナウイルスのパンデミック期に、在宅勤務と出社を組み合わせるハイブリッド勤務が広がった。しかし、ロイターが収集したデータや金融機関幹部とのインタビューから、世界的に従業員の出社比率が見通しに届いていないことが分かった。

通勤費が懐に入るのが普通になった従業員は、燃料費や食費などの負担急増でますます出社に消極的になり、企業はオフィスワークの魅力向上という課題を抱えている。

非営利団体「パートナーシップ・フォー・ニューヨークシティ」のキャサリン・ワイルデ最高責任者(CEO)は「雇用主はオフィスをより魅力的で意義深いものにするため、かなりの手段を講じている」と述べた。食事の無料提供から共有スペースに卓球台を備えて充実させるなど、さまざまな福利厚生策が導入されているという。

コンサルタント会社、アドバンスト・ワークプレース・アソシエーツ(AWA)が8万人近くを対象に世界規模で実施した調査からは、従業員がハイブリッド勤務の決まりを守っていない様子が浮かび上がった。

調査結果によると、義務づけられた出社日数が「2日」、「2日か3日」、「3日」の場合について調べたところ、実際の出社日数はそれぞれ1.1日、1.6日、2.1日だった。

AWAのマネジングディレクター、アンドルー・マーソン氏は「ロックダウンが解除になり制限が緩和されて、人々はオフィスに行こうとした。実際に出社すると仕事はズーム会議への参加だけだった」と話す。「人々が出社しないのは、自分にぴったりのライフスタイルとコスト構造に慣れてしまったからだ」という。

オフィスのホテル化

金融業界の若手従業員はリモートワークがキャリアアップに与える影響を懸念しているが、求職者はリモートワークを希望している場合が少なくない。

柔軟な働き方を希望した上で仕事を検索できるオンラインプラットフォーム、フレクサの広報担当者によると、8月に入ってからは金融関連で職探しする人で「リモート」もしくは「リモートファースト」の仕事を希望する人は全体の80%に達し、3月から33%増加した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円が対ドルで5円上昇、介入観測 神田財務官「ノーコ

ビジネス

神田財務官、為替介入観測に「いまはノーコメント」

ワールド

北朝鮮が米国批判、ウクライナへの長距離ミサイル供与

ワールド

北朝鮮、宇宙偵察能力強化任務「予定通り遂行」と表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中