最新記事

2020米大統領選

バイデン、「ハリス効果」でアジア系取り込みに弾み

2020年8月18日(火)10時54分

米大統領選の民主党候補に指名されるバイデン前副大統領の陣営は、アジア系米国人の票の取り込み強化を画策する。写真は12日、デラウェア州ウィルミントンでバイデン氏の選挙イベントに出席したハリス氏(2020年 ロイター/Carlos Barria)

米大統領選の民主党候補に指名されるバイデン前副大統領の陣営は、アジア系米国人の票の取り込み強化を画策する。副大統領候補に起用したハリス上院議員のインド系移民の娘という経歴が、米国のマイノリティー(少数派)で人口が最も急速に拡大している有権者層の心に響くと踏んでいる。

母親がインド出身、父親がジャマイカ出身のハリス氏は今週、歴史を作った。主要政党で大統領選に参加する初の黒人女性かつアジア系米国人となったのだ。バイデン氏は12日、副大統領候補としてハリス氏を紹介する際、「彼女の歴史は米国の歴史だ」と語った。

アジア系米国人は有権者層としてしばしば見過ごされてきた。人口は米国民全体の6%に満たない。しかし、その重要な激戦州でこうした人口は急速に拡大しており、アジア系米国民の投票率が大きく上がれば、11月の大統領選挙結果を左右するのに十分な可能性がある。

バイデン陣営でアジア系・太平洋諸島系米国人(いわゆる「AAPI」)への戦略を担う責任者、アミット・ジャニ氏によると、バイデン氏のハリス氏指名発表後、ソーシャルメディアやインターネット掲示板の書き込みがあっという間に膨らみ、何か関われないかと電話してくるアジア系米国人が相次いだ。「南アジアやインド系のコミュニティーでこんな興奮が起きたのは見たことがなかった」。

バイデン陣営はこれまでに、秋の大統領選直前広告用の資金2億8000万ドルの一部をAAPI系の動員につぎ込むと表明している。その中には特定の民族系のメディアでの広告枠買い取りも含まれる。

アジア系米国人といっても一枚岩には程遠く、民族構成は多様だが、ここ数十年の選挙では全般に民主党を支持している。ロイター/イプソスの投票日当日調査によると、2016年の大統領選ではヒラリー・クリントン候補のAAPI系からの全米の得票は2対1の割合でトランプ氏を上回った。

各種世論調査によると、フロリダ、ミシガン、ノースカロライナ、ジョージア、テキサスといった州では、いずれもこれまでの調査で支持結果が拮抗している州だが、AAPI系の人口増加率は12年から18年にかけて40%を上回った。AAPIデータなどがまとめたデータによると、この増加率は各州での総住民数の増え方の3倍以上だった。こうした州はどこも、アジア系米国人の中でインド系が最大グループを構成している。

また16年大統領選ではミシガン州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州の全体でトランプ氏の得票数は8万票に満たなかったが、この3州には計50万人以上のAAPI系が住む。

AAPIデータの創設者で、カリフォルニア大学リバーサイド校のカーシック・ラマクリシュナン教授は、いろいろな激戦州で「アジア系米国人の票が勝敗を分ける可能性がある」と述べた。

インド系米国人の票を得ようと、トランプ大統領は昨年、訪米中のモディ首相をテキサス州に招き、インド系住民を中心に約5万人が参加した歓迎集会を開催した。モディ氏はお礼に今年2月、インドを訪問したトランプ氏のために11万人が参加する集会を開いて見せた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米鉱工業生産、5月製造業は0.9%上昇 予想上回る

ワールド

バイデン氏、不法移民救済 市民権取得に道 米大統領

ビジネス

米5月小売売上高、予想下回る0.1%増 高金利で裁

ワールド

今後1年で金準備増やす中銀増える見通し=WGC調査
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サウジの矜持
特集:サウジの矜持
2024年6月25日号(6/18発売)

脱石油を目指す中東の雄サウジアラビア。米中ロを手玉に取る王国が描く「次の世界」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 2

    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は「爆発と強さ」に要警戒

  • 3

    えぐれた滑走路に見る、ロシア空軍基地の被害規模...ウクライナがドローン「少なくとも70機」で集中攻撃【衛星画像】

  • 4

    800年の眠りから覚めた火山噴火のすさまじい映像──ア…

  • 5

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 6

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 7

    ルイ王子の「くねくねダンス」にシャーロット王女が…

  • 8

    中国「浮かぶ原子炉」が南シナ海で波紋を呼ぶ...中国…

  • 9

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 10

    中国不動産投資は「さらに落ち込む」...前年比10.1%…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    新型コロナ変異株「フラート」が感染拡大中...今夏は「爆発と強さ」に要警戒

  • 4

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 8

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 9

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 10

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中