最新記事

動物

2年越しの調査で絶滅危惧種ジャワヒョウ10頭確認 インドネシア、保護政策が課題に

2019年5月6日(月)19時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

自然保護団体の2年がかりの調査で撮影されたジャワヒョウ (c) conservationID

<絶滅したと思われていた野生動物でも、熱帯のジャングルに身を潜めて生き延びていたものもいる。だが、彼らが危機に瀕していることに変わりはない>

インドネシアのジャワ島にだけ生息する絶滅危惧種のジャワヒョウが、自然保護団体がジャングルに設置した隠しカメラによって10頭確認された。

インドネシアでは同じく絶滅危惧種のジャワサイの死骸が3月21日に西ジャワで発見され、残る個体数が67頭に減少しているなど、森林開発、違法伐採、密猟などで野生動物が絶滅の危機に瀕していることが問題になっており、国を挙げての保護対策が急務となっている。

自然保護団体「コンサベーション・インターナショナル(CI)」インドネシア支部と「西ジャワ自然資源保全センター(BBKSDA)」などによる合同チームは西ジャワ州グントゥールのパパンダヤン保護林でジャングル内に隠しカメラを仕掛けて調査を行った。その結果、10頭のジャワヒョウ(オス3頭、メス7頭)の生息を確認した、と地元紙「ジャカルタポスト」が5月4日に報じた。

CIとBBKSDAは2016〜18年の2年間、ジャングルに60個のカメラを設置して午前6時から2時間、午後10時から2時間撮影し、記録を続けた。

その結果を詳細に分析した結果、83点の画像の中から10頭のジャワヒョウの存在が確認されたという。CIインドネシアのアントン・アリオ氏は発表された声明の中で「画像の分析から各個体のサイズ、雄雌の判別、ヒョウ柄の模様のパターンを記録することができた」と成果を強調した。

さらにアントン氏はジャワヒョウの生息が観測された地域には「ジャワギボン、ジャワ灰色リーフモンキー、ジャワスローロリス」などの希少種も生息しており、貴重な動物の宝庫であると指摘。そうした希少動物の生息環境が「違法な森林伐採により脅かされている」と環境破壊に警告を発している。

ジャワスローロリスは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで近い将来に野生種が絶滅する危惧がある「近絶滅種」に指定されている。

ジャワトラはすでに絶滅

インドネシアのジャワ島には固有の動物が確認されており、かつては同じ大型の食肉目ネコ科であるジャワトラも生息が確認されていたが、1976年の目撃情報を最後に生存が確認されておらず1980年代に絶滅したといわれている。

ところが2017年、ジャワ島西部バンテン州にあるウジュン・クロン国立公園内で職員が撮影した動画に生きているジャワトラらしき動物が写っていた。同国立公園にはジャワヒョウも生息していることから「絶滅したとみられているジャワトラか、個体数が激減しているジャワヒョウか」とニュースになったが、映像からはどちらなのかは断定できずに調査が続けられたが、確定的なことは現在もわかっていない。

このほかに約100年前に絶滅したとされる動物にジャワゾウがある。最近、ボルネオ島のボルネオコビトゾウがそのジャワゾウの子孫ではないかとの研究結果が世界動物基金(WWF)によって報告されている。

自然保護団体の2年がかりの調査で撮影されたジャワヒョウ
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪小売売上高、5月は前月比0.2%増と低調 追加利

ビジネス

午前の日経平均は続落、トランプ関税警戒で大型株に売

ワールド

ドバイ、渋滞解消に「空飛ぶタクシー」 米ジョビーが

ワールド

インドネシア輸出、5月は関税期限控え急増 インフレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 10
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中