最新記事

インドネシア

K-POPアイドルBLACKPINKを宗教警察が逮捕? 公演控えたインドネシアでパロディ写真が議論に

2019年1月16日(水)18時32分
大塚智彦(PanAsiaNews)

過激な服装で放送禁止となったCM事件

インドネシアの大手オンライン通販の「ショッピー」のテレビCMに登場したBLACKPINKは、ミニスカートやホットパンツにノースリーブで肩を出した服装だったことから「過度の肌の露出は極めて下品で淫らである」としてインドネシア国家放送委員会が2018年12月11日にCMの放映禁止をテレビ11局に通達した(「インドネシア当局、K-POPアイドルBLACKPINKのCM放送中止を要請 イスラム的道徳観では淫らで下品」)。

もっとも放送禁止を打ち出したのはこのCMの放映契約が切れる日と同日だったために、ショッピー側には実害はほとんどなく、放送禁止となったことで逆に大きな宣伝効果があったとされている。

このときはBLACKPINKファンによる懇願にも関わらずに約10万人が「放送禁止」を求めて署名するなど、インドネシアでは大きな騒動となった経緯がある。


ショッピーは、今も新しいプロモーションにBLACKPINKを起用している SHOPEE Indonesia / YouTube

今回、パロディ写真を作成したアガン氏は「インドネシアの検閲制度にはうんざりしている。女性の体のごく限られた部分や水着姿でさえその批判の対象となり、禁止だ、削除だ、となる現状はまったくおかしい」とメディアのインタビューに答えている。

アガン氏のインスタグラムでのパロディ写真による「宣伝効果」もあったのか、BLACKPINKのジャカルタコンサートは当初20日だけだったが、人気の沸騰とファンの強い要望から急きょ前日の19日に追加公演が行われることが決まった。

彼女たちの曲を借りれば「PLAYING WITH FIRE(火遊び)」のような危ないCMが放送禁止となったものの、それで「AS IF IT'S YOUR LAST(最後のように)」とはならず、インドネシアでのBLACKPINKの人気は衰えるどころか、ますます急上昇している。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NZ金融システムは強固、家計に高金利の影響も=中銀

ワールド

米重要インフラのサイバー対策強化へ、大統領が覚書 

ワールド

米コロンビア大、警官隊が反イスラエルデモ参加者排除

ワールド

EUがメタに調査開始、偽情報対策を問題視 欧州議会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 6

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 7

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 10

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中