最新記事

人種問題

優秀過ぎるアジア人学生「締め出し」でハーバード大学が犯した罪

2018年6月25日(月)19時30分
リー・ハビブ(セーラム・メディア・グループ副社長、ラジオ司会者)

だが合否判定プロセスはコカコーラのレシピとは違う。また、ハーバードが政府から5億ドルもの補助金を受け取っていることを考えても、人種差別の批判から逃れるためにそんな言い訳を使うことなど許されるはずがない。

理性がある人なら誰だって疑問に思うはずだ。ハーバードはアジア系学生の何を不満に思っているのかと。

公平を期すために言っておくと、こうしたことをやっているのはハーバードだけではない。全米各地の難関と言われる大学や高校が同様の差別を行っている。

アメリカの全人口の5.6%に過ぎないアジア系が「マイノリティ」であることは言をまたない。多くは肌の色が濃いし、顔立ちも違えば話す言葉も違う。貧しくともしっかりとした価値観と家族、そして高い労働倫理を携えてこの国にやってきた人々だ。

アジア系アメリカ人は、アメリカン・ドリームが健在であることを示すいい証拠だ。彼らの成功は、アメリカが白人と見た目や言葉が違う人々の社会的地位の向上を阻もうとする頑迷な輩や人種差別主義者の国ではないことの証拠でもある。

母のルーツを否定された女子学生

果たしてハーバードは人種差別という罪を犯したのだろうか。数年前にニューヨーク・タイムズに掲載された記事からは、同大学の知らぬ存ぜぬの主張がいかにばかげているかが見て取れる。

記事によれば、メリーランド州ベルツビルの高校3年生だったナターシャ・スコットは、大学への願書 を出すに際して1つ悩みを抱えていた。そこで彼女は、進学情報サイトの掲示板 にこんな投稿をしたという。

「自分の人種について考えなければならないことに気がつきました。こんなことは言いたくないけれど、黒人の欄に印を付ければ合格の可能性は上がるかも知れないけれど、アジア系に印を付ければ下がってしまうかも知れない」。ナターシャの母はアジア系で父は黒人だったのだ。

アフリカ系に印を付けるようにと母からも言われたとナターシャは言う。

「そうしたいのは山々だけれど、道義的に正しいことなんだろうかと悩んでしまう」と彼女は書いた。

何人かからアドバイスが寄せられたが、アフリカ系に印を付けろという人はいても、アジア系だけに印をつけろと言った人は誰もいなかった。

ナターシャはアドバイスに従ったが、内心忸怩たる思いもあったようだ。

「黒人にだけ印を付けたことに罪悪感を少し感じているのは事実だ。なぜなら私は、合格のために印象をよくしようと、自分自身の一部をわざと否定したのだから」と彼女は語ったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中