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フェイスブックの炎上と映画が発端でノルウェー政権解体の危機

2018年3月20日(火)14時30分
鐙麻樹(ノルウェー在住ジャーナリスト&写真家)

でも、この「ありえない」ことが、20日に国会で現実となりそうだ。19日、キリスト教民主党は、「リストハウグを信頼できない」と公に発言した。

内閣総辞職か、リストハウグ炎上大臣とこれからも共に歩むか

法務大臣に対する不信任案が、大多数で可決されるとどうなるか。

野党の思い通りに、リストハウグ大臣が退陣という流れを、与党は受け入れがたい。「それならば、リストハウグと一緒に、全員で解散だ」と首相は賭けにではじめた。

政府に対する不信任案決議となると、キリスト教民主党も渋るかもしれない。内閣相違辞職に追い込まれた場合は、首相率いる保守党が新たな形で政権の基盤を模索するか、野党の労働党が新政権を樹立することとなる(解散選挙はない)。

たった1週間で、大臣のFacebookの投稿が発端で、内閣総辞職になるかもしれないという、信じられないことが起きているノルウェー。

謝罪しても許されない理由

首相も法務大臣も「珍しく」謝罪したのだから、不信任案は行き過ぎだろうか。

これは、今回の件だけが原因ではない。リストハウグ氏がこの約5年間、何度もしてきた炎上発言とFacebook投稿の代償ともいえる。

この騒動が沈静化しても、彼女がまた計画的に炎上を起こすのは明白だ。それでも、ノルウェー国民は昨年の選挙で、リストハウグ氏がいる保守派政権を選んだ。

その「投稿」ボタンは、本当に押す必要があるのか

SNSの投稿ボタンを押す瞬間に、他者への思いやりが、法務大臣にもう少しでもあったら。事態は、変わっていたのかもしれない。

外国人として事態をみている筆者が、何より思うことがある。テロを経験した生存者に、「お前が死ねば良かった」という脅迫が届いていることが、悲しくてならない。
Photo&Text: Asaki Abumi

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yoroi-profile.jpg[執筆者]
鐙麻樹(ノルウェー在住 ジャーナリスト&写真家)
オスロ在住ジャーナリスト、フォトグラファー。上智大学フランス語学科08年卒業。オスロ大学でメディア学学士号、同大学大学院でメディア学修士号修得(副専攻:ジェンダー平等学)。日本のメディア向けに取材、撮影、執筆を行う。ノルウェー政治・選挙、若者の政治参加、観光、文化、暮らしなどの情報を数々の媒体に寄稿。オーストラリア、フランスにも滞在経歴があり、英語、フランス語、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語で取材をこなす。海外ニュース翻訳・リサーチ、通訳業務など幅広く活動。『ことりっぷ海外版 北欧』オスロ担当、「地球の歩き方 オスロ特派員ブログ」、「All Aboutノルウェーガイド」でも連載中。記事および写真についてのお問い合わせはこちらへ


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