最新記事

北朝鮮

中国軍駐留で北朝鮮の非核化を

2017年12月7日(木)15時45分
オルトン・フライ(米外交問題評議会名誉研究員)

中国軍を北朝鮮に配備すれば状況は変わるかもしれない(写真は人民解放軍のパレード) China Daily-REUTERS

<非難決議も制裁強化も金正恩の核開発を止められない......しかし中国が金政権の安全を「再保証」したらどうなるか>

北朝鮮の核開発を阻止する各国の試みは、ことごとく失敗に終わってきた。国連決議もダメ。制裁強化もダメ。声高な非難の応酬も逆効果で、金正恩朝鮮労働党委員長の態度をかえって硬化させているようだ。現に北朝鮮は11月29日に日本海へ、今までよりも強力なICBM(大陸間弾道ミサイル)を撃ち込んでみせた。

どうすれば朝鮮半島の非核化は可能なのか。冷戦時代の経験に1つのヒントがありそうだ。つまり「戦略的再保証」を与えることで、当該国の核開発を断念させる手法だ。

北朝鮮が核開発にこだわるのは、アメリカと韓国が金政権の転覆をもくろみ、侵略してくると恐れているからだ。

そんなばかな、とアメリカ側は言うだろう。レックス・ティラーソン米国務長官も、政権転覆の意図はないと明言している。それでも北朝鮮は莫大な資金を投じ、猛スピードで核兵器とミサイルの開発を続けている。

アメリカには北朝鮮侵略の意図がないこと。そうである以上、核開発を断念せよとの国際社会の要求を無視し続ければ悪い結果を招くこと。この2点をいくら説いても、北朝鮮を納得させるのは難しい。

もちろんアメリカ政府の宣言だけでは足りないが、もっと有効な方法がある。かつて核兵器開発能力を持つ国に(それも今の北朝鮮よりずっと高度な技術を持つドイツや日本、そして韓国に)核開発を断念させる上で有効だった方法である。つまりアメリカとの強固な軍事同盟の存在と、それを担保する米軍の現地駐留という方法だ。

歴史学者のマイケル・ハワードも指摘したように、同盟国による「再保証」は「核抑止力」と同じくらい重要だ。敵国からの不可侵の約束と合わせて安定化を二重に図れるからだ。

現時点で北朝鮮の挑発行為への対抗策は、制裁強化などの外交努力と、先制攻撃の可能性をちらつかせる恫喝が中心になっている。しかしアメリカが本当に軍事行動を選択すれば、本格的な戦争に発展するリスクが高まるのはほぼ確実だ。

「制裁と孤立」の緩和を

これまでの議論や断続的な交渉で一貫したテーマになっているのは、この流れを止める鍵を握るのは中国ということだ。

中国は北朝鮮の最大貿易相手国であり、安全保障上の最強の後ろ盾だ。にもかかわらず北朝鮮の政策変更にはあまり影響力を発揮していない。だが中国も朝鮮半島の非核化を望むと明言しており、渋々ながらも貿易削減などの制裁強化で国際社会と足並みをそろえてきている。しかし現状を見る限り、外交努力や経済制裁で金正恩に野望を断念させるのは難しい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ミャンマー内戦、国軍と少数民族武装勢力が

ビジネス

「クオンツの帝王」ジェームズ・シモンズ氏が死去、8

ワールド

イスラエル、米製兵器「国際法に反する状況で使用」=

ワールド

米中高官、中国の過剰生産巡り協議 太陽光パネルや石
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中