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北ミサイル、中国の本音は?――中国政府関係者独自取材

2017年12月4日(月)15時38分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

Q:それならなおさら、今こそ、北朝鮮に送っている原油のパイプラインを遮断すべきではないのか?

A:そうしたら確かに北朝鮮は持たない。しかし同時に、「中国が遮断したのだ」ということが明確になるわけだから、北のミサイルは北京に向かってくるだろう。

Q:中朝戦争になるということか?

A:そうだ。だから中国は国連安保理決議による制裁にしか踏み切っていない。おまけに国連安保理決議は忠実に履行している。

Q:いま習近平とトランプの仲は非常にいいのではないのか。もし北朝鮮が北京にミサイルを向けてくるというのなら、アメリカと連携しながら北をやっつけてしまうことができるのではないか?

A:米中の連携はもちろん考えている。しかしアメリカには日本がいつも、くっついている。日米同盟があるじゃないか。米中が軍事的に連携すれば、日本とも連携したことになる。特に安倍政権は憲法を改正して軍国主義の道をまた歩もうとしている。中国がそんな日本と軍事的に連携するなどということが、あり得るとでも思っているのか?

Q:あり得ないことは分かっている。だからこそ中国は10月末に韓国と「三不一限」の中韓合意文書を出して、日米韓連携に当たり韓国が日本と軍事同盟を結ばないように、韓国を日本から切り離そうとしているのではないのか?

(筆者注:三不一限とは11月26日付けコラム<韓国を操る中国――「三不一限」の要求>に書いたように「米国のミサイル防衛体制に加わらない。韓米日安保協力が三カ国軍事同盟に発展することはない。THAADの追加配備は検討しない。現有のTHAADシステムの使用に関しては、中国の戦略的安全性の利益を損なわないよう、制限を設ける」のこと。)

A:韓国は日本とは距離を置けても、アメリカとは距離を置けない。その証拠にTHAADを韓国に配備し、結局、安全保障上、中国に不利益を与える状況から韓国は抜け出せないでいる。どんなに文在寅(韓国大統領)が訪中しようとも、米韓軍事同盟を放棄することはしないだろう。

Q:韓国が中国の傘の下に入り、中国に守ってもらうという選択はあり得ないと思うが......。

A:当然だ。北朝鮮は中国が韓国と国交を結んだだけで(1992年)、どれだけ中国を敵対視し始めたことか。米中が仲良くするだけでも「敵と通じ合っている」として中国を敵国扱いしている。韓国がアメリカから離れ中国と同盟を結んだら、中朝戦争はすぐに始まる。北朝鮮は実にやっかいな国だ。

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