最新記事

ロシア

プーチンの危険な「綱渡り」、北朝鮮支援をひそかに加速

2017年10月10日(火)17時48分

10月4日、ロシアは、金正恩・朝鮮労働党委員長(中央)を失脚させようとする米国主導の試みを阻止すべく、ひそかに北朝鮮に対する経済支援を加速させている。KCNAが9月提供(2017年 ロイター)

ロシアは、金正恩・朝鮮労働党委員長を失脚させようとする米国主導の試みを阻止すべく、ひそかに北朝鮮に対する経済支援を加速させている。金正恩氏が失脚すれば、ロシアの地域的影響力の衰退と、東部国境沿いへの米軍配備を招くことになるからだ。

ウクライナ情勢を巡り西側諸国から科された制裁が解除される見込みが一段と遠のくなか、ロシアは米国との冷え込んだ関係を改善したいと考えてはいるが、米国が他国の内政に干渉していることに強く反対する姿勢は崩していない。ロシアの外交官やクレムリン(大統領府)に近い専門家らはそう明かす。

ロシアはすでに、米国が主導する北大西洋条約機構(NATO)部隊が自国の西部国境付近に増強されていることに腹を立てており、アジア地域で同様の事態を招きたくないのだという。

旧ソ連の衛星国として始まった北朝鮮を保護することに関心を示すロシアだが、フリーパスを与えているわけではない。ロシアは、北朝鮮が先月強行した核実験に対する国連の追加制裁を支持している。

だが同時に、北朝鮮を経済的に孤立させようとする米国などの取り組みから北朝鮮を守ろうと、わずかなライフラインをひそかに提供するという、裏表を使い分けた危うい行動を取っている。

ロシアの通信会社は今月、北朝鮮へのインターネット接続を提供開始した。北朝鮮は、中国に次ぎ、2つ目の接続手段を得たことになる。

2017年第1・四半期におけるロシアと北朝鮮の2国間貿易は3140万ドル(約35億円)と、2倍以上に増加。ロシア極東発展省によると、その主な要因は石油製品の輸出が増えたことだという。

少なくとも8隻の北朝鮮船籍の船が今年、燃料を積んでロシアを出航し、北朝鮮に帰港している。表向きの目的地は、母国ではない他の場所としており、これは北朝鮮が制裁効力を弱めるためによく使う策だと米当局者らは話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独VWの第1四半期、営業利益が20%減 年間目標は

ビジネス

米テスラ、上級幹部を削減 追加レイオフも実施=ニュ

ビジネス

訂正-日経平均は続伸、米株高を好感 決算手掛かりに

ビジネス

3月新設住宅着工戸数は前年比12.8%減、10カ月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中