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インドネシアで高まる反中感情、宗教対立の選挙と雇用懸念が拍車

2017年4月24日(月)17時11分

4月20日、インドネシアでは、激戦となった首都ジャカルタの特別州知事選挙によって宗教対立が煽られる一方で、中国人に対する嫌悪感情に注目が集まった。写真は3月、ジャカルタの街並み(2017年 ロイター/Darren Whiteside)

インドネシアでは、激戦となった首都ジャカルタの特別州知事選挙によって宗教対立が煽られる一方で、中国人に対する嫌悪感情に注目が集まっている。中国からの不法就労者の流入をめぐる陰謀説が広がったことで、自警団による取り締まりが活発化したからだ。

ジョコ大統領が、インフラなど大型プロジェクトに積極的な中国人投資家を優遇する政策を展開したこともあり、中国からのインドネシアに対する直接投資は昨年26億7000万ドル(約2900億円)と過去最高を記録している。

だが、手っ取り早い投資の誘致には代償が伴う。中国企業は自社の従業員と機械を持ち込むことが普通であり、同国で摩擦が生じていることが労働団体や企業幹部、政府当局者への取材で明らかになった。

「外国人労働者への恐怖症」が政治的な動きにつながり、ジャカルタ州知事選をめぐる対立が過熱した、とインドネシア投資調整庁のレンボン長官は語った。

今回の選挙は、中国系キリスト教徒である現職のバスキ・チャハヤ・プルナマ知事とイスラム教徒のアニス・バスウェダン前教育・文化相の争いとなった。19日行われた決選投票では、アニス氏が過半数を獲得し当選を確実にし、プルナマ氏は敗北するとみられている。

プルナマ氏はジョコ大統領率いる与党に支援されており、レンボン長官によれば、外国人、特に中国人に対する反感は、同国政権と対立するライバルたちに利用されてきたという。

「中国からの投資がアジア経済を牽引する最大の要因になろうとしている時期だというのに、政治的な感情を外国人や中国人を嫌悪する方向に引っ張っていこうという広汎な動きがある」とレンボン長官はロイターの取材に語った。

インドネシア労働省によれば、就労ビザを持つ中国人労働者数は過去2年間で30%増加しており、2016年には2万1271人に達した。これに対し、日本からは昨年1万2490人で、米国からは2812人にとどまっている。

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