最新記事

テクノロジー

ビットコインだけじゃない、ブロックチェーン技術を使った注目のスタートアップ

2016年8月24日(水)17時15分
Team Nelco (Nissho Electronics USA)

ダイヤモンドの所有権や、取引の記録を保存する台帳をブロックチェーンの技術を用いて開発されている。

<ブロックチェーンは、分散型台帳技術や分散型ネットワークと呼ばれる技術だ。今、この技術を活用して、ビットコイン以外にも、資産管理、認証、医療、IoTなど、様々な分野のベンチャー企業が生まれている>

「ブロックチェーン = ビットコイン」は大きな間違い

 ブロックチェーンと聞くと、ビットコインをまず思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、「ブロックチェーン = ビットコイン」と捉えるのは間違いです。ブロックチェーンとは、ビットコインを実現するために生まれた分散型台帳技術や分散型ネットワークと呼ばれる技術であり、ビットコインとは明確に区別する必要があります。

 例えば、2014年のビットコイン交換所のマウント・ゴックスのビットコイン消失騒動は大きく報道され、ビットコインのネガティブな印象を植え付けました。結果、ビットコインやブロックチェーン技術への懐疑的な見方が多く存在しています。しかし、これは円やドルの通貨に例えると、銀行に預けていたお金が銀行が破産したために引き出せなくなったというような事例です。ビットコインという通貨自体、そしてその根幹のブロックチェーン技術自体の信頼性を揺るがすような問題ではありません。

 さらに、ブロックチェーンは、ビットコインで使われている技術をより一般化した概念で、全く同じものではありません。例えば、ビットコインのマイニングという興味深い仕組みは、ブロックチェーンに必須ではないといった違いがあります。

 このように、「ブロックチェーン = ビットコイン」と考えると、ビットコインという通貨自体と周辺のシステム(交換所など)の特徴・長短所と、ブロックチェーンという技術の特徴・長短所を混同してしまいます。ビットコインはブロックチェーンを利用・応用した仕組みと捉える方が望ましいのです。

【参考記事】「次のインターネット」、噂のブロックチェーンって何?

ブロックチェーンの3つの特徴

 ブロックチェーンはなぜ様々な分野に可能なのでしょうか。ブロックチェーンというのは、分散型台帳技術と呼ばれますが、簡単に言うと、物やお金などのやり取りの記録を分散して保存するデータベースの仕組みです。取引のデータを一か所に集めるのではなく、複製を分散させ、お互いを監視させることでデータの整合性を保つ仕組みになっています。

特徴1. 安定したシステムの運用が可能

 システムトラブルによってネットワークの一部が破損しても、他の部分から復旧させることができるため、信頼性が高いという特徴があります。また、誰かがシステムを保有している訳でないので、故意にシステムを終了させることもできません。

特徴2. データの改ざんが難しい

 複数に分散されている情報との整合性の有無を利用することで、悪意ある管理者がデータの改ざんを行おうとしても防ぐことができます。ビットコインのようなデータに高い極めて高い信頼性が必要な用途で利用されていることからも理解できます。

特徴3. システムの構築・運用コストが低い

 ネットワークの参加者が協力してシステムを構築することで、中央管理システムが不要になります。中央管理システムは、膨大なデータを破損させずに、24時間365日高い信頼性を持って運用されるインフラや、インフラを運用するための組織の運営、悪意あるデータ改ざんを防ぐためのルールや監視などが不要になります。ブロックチェーンを用いて構築すると、これらが不要になるため、より低コストで導入できると言われています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス銀行資本規制、国内銀に不利とは言えずとバーゼ

ワールド

トランプ氏、公共放送・ラジオ資金削減へ大統領令 偏

ワールド

インド製造業PMI、4月改定値は10カ月ぶり高水準

ビジネス

三菱商事、今期26%減益見込む LNGの価格下落な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 8
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中