最新記事

インタビュー

GE流インダストリアル・インターネットで、デザインが重要な理由

[カトリーヌ・ラウ]GE シニアUXリサーチャー

2016年8月25日(木)16時38分
WORKSIGHT

<IoT(モノのインターネット)が世界で広がりつつあるが、その大きなチャンスは産業分野にある。GEが取り組む「インダストリアル・インターネット」がそれ。どんなメリットがあり、また「デザインが重要」なのはなぜか。GE のシニアUXリサーチャー、カトリーヌ・ラウ氏が語った>

 2016年1月、サービスデザインをテーマとする日本最大規模のカンファレンス「Service Design Japan Conference 2016」が開催された(主催:Service Design Network日本支部)。

 登壇者の1人であるGE シニアUXリサーチャー、カトリーヌ・ラウ氏の講演内容と、その後のメールでの質疑応答に基づき、GEにおけるサービスデザインの取り組みについて紹介する。

◇ ◇ ◇

 IoT(Internet of Things/モノのインターネット)が世界中に広がりを見せている。スマートセンサーを内蔵して手軽に最適な温度を維持できる暖房器具や、身体の状態をモニタリングしてくれるウェアラブルのヘルスケア機器、スマートフォンや携帯電話を通じてコントロールできる建物のセキュリティシステムなどはよく知られているだろう。

 IoTはこうした生活に関わるものだけでなく、規模の大きな産業機械やインフラにも広がっている。「ゼネラル・エレクトリック(以下、GE)が取り組んでいるのは、まさにその部分です」とカトリーヌ・ラウ氏は説明する。風力発電やジェットエンジン、ガスタービンなど、産業分野へのIoTの実装を進めているのだ。

【参考記事】IoT普及率100%を目指すカナダ、普及率わずか5%の日本は何を学ぶ?

 GEではこれを「インダストリアル・インターネット」と呼んでおり、「大きなモノのインターネット(Internet of Big Things)」と見なすこともできるだろう。

 2020年までにインダストリアル・インターネットによって2兆ドル規模のビジネスチャンスが生み出されると見られる。2025年までにインターネットにつながる事業関連アセットの数は、あらゆる種類のデバイスを含めると実に450億に上るという。このうちコンシューマ向けがおよそ160億、広告向けが120億、産業向けが170億を占める。

 消費者の実感としてインダストリアル・インターネットのインパクトを感じるのは冒頭に挙げたようなコンシューマ向けプロダクトではあるものの、それを上回るチャンスが産業分野に広がっているわけだ。

「産業機械」「ソフトウェア」「人間」の3つの要素をつなげる

 GEが取り組むインダストリアル・インターネットとは具体的にどのようなものか。*

 まず、航空機、パイプライン、エンジン、鉄道など、あらゆる分野にオンライン化された機械、いわば"インテリジェントな機械"がある。数年前まではネットにつながっていなかったものも接続されるようになり、産業機器やデバイスが生み出す膨大なデータをソフトウェアで管理したり分析にかけることができるようになった。

 その結果をワーカーや管理者といった人間にフィードバックする。そこからさらに効率よくインテリジェントな機械を動かすように人間が工夫を加えていく。

【参考記事】ドイツ発「インダストリー4.0」が製造業を変える

「産業機械、ソフトウェア、人間という3つの要素をつなげ、よいシナジーをもたらすことで、初めてインダストリアル・インターネットが成立するのです」(ラウ氏)

wsRau_1-zu1c.gif

機械、ソフトウェア、人間という3つの要素をつなげ、よいシナジーをもたらす。(ラウ氏提供の図版を元に作成)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独メルセデス、米アラバマ工場のUAW加入を妨害せず

ワールド

米商務省がベトナムの「市場経済国」認定巡り公聴会 

ワールド

中国輸出、4月前年比+1.5% 輸入と共にプラス転

ワールド

中国原油輸入、4月は前年比+5.45% 大型連休控
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中