最新記事

犯罪

「刑務所ビジネス」に群がる金と企業

Imprisoned by Money

全米の矯正施設関係者が集う大イベントの見本市から見える巨額の利権構造と企業の儲け主義

2016年3月14日(月)17時10分
エリック・マーコウィッツ

巨大産業 関連ビジネスの繁栄で独房もピカピカに? Brendan McDermid-REUTERS

 刑務所護送バスの前に立ったセールスマンが、客を車内へと誘導する。鋼鉄製の檻や防弾仕様の窓、ハイテクの監視カメラシステムに、人々は感嘆の声を挙げる。この手の車両のお値段は? 58万ドルほどするらしい。

 護送バスだけではない。ほかにも何百点もの刑務所製品やサービスが、ニューオーリンズで先月行われたアメリカ矯正協会(ACA)の冬季年次総会でお披露目された。主催者によれば、この総会は「刑務所関係者が集う全米最大のイベント」。期間中には数十のワークショップやパネルディスカッションが行われる一方で、展示会フロアでは刑務所をめぐる民間産業の広くて深いビジネスの世界をのぞくことができる。

【参考記事】ロシア刑務所改革、囚人には悪夢?

 その光景は、一般的な見本市とさほど変わらない。各企業ブースには企業ロゴがプリントされたポロシャツを着た社員が立ち、来場者にペンやトートバッグを無料配布したり、カタログを手渡したりしている。

 開会式のときには、全米屈指の民間刑務所会社であるGEOグループのブースからウエーターが出て、スナックやフィンガーフードを給仕して回った。

 普通の見本市と違うのは、このイベントが一般には非公開で、来場者はほぼ刑務所長や刑務官、州の矯正機関の責任者らに限られている点だろう。展示会の出展者たちは皆、全米で800億ドルにも上る刑務所産業の分け前にあずかろうとしている。

 展示された技術の粋を見るには、実際に会場に行くしかない。コンベンションセンター全域で写真撮影は厳しく禁止されている。今年は全米から240以上の出展者が商品を持ち込み、6日間のイベントで6メートル四方のブースに最大8600ドルの出展料を支払った。

 護送バスのほかにも、売店販売用の食べ物、拘束椅子、エクササイズマシン、拳銃、防護フェンス、監獄用照明、そして当然ながら鍵や手錠なども出展されている。ドイツのデドローン社によるドローン検知システムも登場した。

【参考記事】囚人はなぜ簡単に自殺できるのか

本末転倒につながる可能性も

 このイベントでひと儲けしようとしているのは、企業だけではない。多くの州で刑務所は過密状態にあり、関係者は運営費に頭を悩ませている。彼らが期待するのが民間企業からの支援。つまり、刑務所内で受刑者に販売する商品(電話から売店グッズ、電子たばこに至るまで)を卸す企業から手数料を受け取ることで、費用の一部を賄っているのだ。

 主催者のACAはバージニア州アレクサンドリアを拠点とする非営利団体で、アメリカの矯正協会としては最大かつ最古の組織だ。ACAは国内の刑務所の質や基準などを認証評価するシステムでよく知られているが、活動費の収益源は圧倒的にこの年次総会に頼っている。

ニュース速報

ビジネス

米国株は公益株買われ上昇、ダウ11日連続最高値更新

ビジネス

ドル112円割れ、トランプ氏の経済政策や3月利上げ

ビジネス

国境調整税、輸出入とも阻害の恐れ=NY連銀報告書

ビジネス

トランプ氏が大統領令署名、連邦規制撤廃・簡素化へ

MAGAZINE

特集:北朝鮮 暗殺の地政学

2017-2・28号(2/21発売)

異国の地マレーシアで殺害された金正男──。その死の背景には北朝鮮をめぐる地政学の変化があった

人気ランキング

  • 1

    オーストラリアの難民政策は「人道に対する罪」、ICCに告発

  • 2

    金正男暗殺事件の毒薬はVXガス マレーシア警察が発表

  • 3

    ついに中国で成立した「トランプ」商標登録

  • 4

    原油が世界中からアジアに集結 OPEC減産で長距離輸…

  • 5

    人類共通の目標に大きな一歩、NASAが地球と似た惑星…

  • 6

    トランプ提唱の国境調整税、輸出入とも阻害の恐れ=…

  • 7

    オルト・ライト(オルタナ右翼)の寵児、「小児性愛O…

  • 8

    金正男暗殺で、また注目される「女性工作員」

  • 9

    マレーシア警察、金正男暗殺事件で空港内「放射性」…

  • 10

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 1

    日本でコストコが成功し、カルフールが失敗した理由

  • 2

    金正男殺害を中国はどう受け止めたか――中国政府関係者を直撃取材

  • 3

    金正男氏を死に追いやった韓国誌「暴露スクープ」の中身

  • 4

    人類共通の目標に大きな一歩、NASAが地球と似た惑星…

  • 5

    金正男の暗殺事件で北朝鮮の男を逮捕 謎の男の正体…

  • 6

    金正男暗殺事件、マレーシア首相が北朝鮮を暗に批判…

  • 7

    オルト・ライト(オルタナ右翼)の寵児、「小児性愛O…

  • 8

    「ペンス大統領」の誕生まであと199日?

  • 9

    金正男氏を「暗殺者に売った」のは誰か

  • 10

    トランプはゴルフしすぎ、すでに税金11億円以上浪費

  • 1

    金正男氏を死に追いやった韓国誌「暴露スクープ」の中身

  • 2

    日本でコストコが成功し、カルフールが失敗した理由

  • 3

    金正男殺害を中国はどう受け止めたか――中国政府関係者を直撃取材

  • 4

    トランプを追い出す4つの選択肢──弾劾や軍事クーデタ…

  • 5

    日本でもAmazon Echo年内発売?既に業界は戦々恐々

  • 6

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 7

    マティス国防長官日韓訪問に中国衝撃!――「狂犬」の…

  • 8

    金正男クアラルンプール暗殺 北朝鮮は5年前から機…

  • 9

    トランプ、入国制限に反対の司法長官代行を1時間後…

  • 10

    トランプの人種差別政策が日本に向けられる日

グローバル人材を目指す

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本再発見 「日本の新しいモノづくり」
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 臨時増刊

世界がわかる国際情勢入門

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2017年2月
  • 2017年1月
  • 2016年12月
  • 2016年11月
  • 2016年10月
  • 2016年9月