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王毅外相はなぜ岸田外相の電話会談を承諾したのか?

2016年3月16日(水)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 このことから分かるように、中露は北朝鮮制裁の実行とともに制裁決議の中に含まれている6ヵ国協議再開への道筋を話し合い、朝鮮半島が危険な状態に突き進まないように検討したと思われる。その緊迫性は、現在韓国で行われている米韓合同軍事演習への警戒と、史上最大規模の軍事演習が北朝鮮をより挑戦的にさせ、暴走させてしまうことへの危惧にあることは、容易に想像がつく。

 国連の安保理決議案に関して、王毅外相はわざわざ訪米してアメリカ側と摺合せ合意に至った上で決議をしようとした。そのときロシアがまだ賛同できない意思を表示したので、中国側はロシア側を説得して、ようやく決議に漕ぎ着けたという経緯がある。
そのときもロシアは制裁決議が出る寸前に北朝鮮に小麦粉などを送り、ギリギリ北朝鮮の「人道的?」支援をしている。

 このような経緯の中で決議された制裁を、中国は今度ばかりは何としても守って欲しいと、強くロシアに対して望んでいるという。船舶の着岸拒否に関しても、3月11日付の本コラム「朝韓間の経済交流即時無効を北朝鮮が――中国新華社が速報」にも書いたように、中国は対北朝鮮の国連安保理制裁決議2270号が発動する前から、北朝鮮からの石炭の輸入禁止などの措置に出ている。

山東省だけでなく香港でも北朝鮮貨物船の入港禁止

 本コラムでも書いてきたように、中国では山東省日照港に入港しようとした北朝鮮船籍の「グランドカーロ号」の入港を拒否している。日照港はこれまで主として北朝鮮の石炭を輸入する港として機能してきたが、今では完全凍結を行なっている。

 3月10日、香港政府の報道官は9日、北朝鮮の貨物船「ゴールドスター3号」(金星3号)が香港の海域に入ることを認めず入港を拒否したことを明らかにした。燃料と船員の生活物資を補給するために入港しようとしたようだが、それでもこの船が国連制裁リストに挙がっている31隻中の1隻なので拒否したという。船は北朝鮮の国旗ではなく、カンボジアの国旗を掲げて偽装していたとのこと。

 それ以外にも中国はこれまでに数隻の北朝鮮船舶の入港を拒否している。今回ばかりは、かなり厳格に国連制裁を守っているようだ。身に危険が迫ってきているので、何としても北朝鮮の暴走を止めたいという切迫した状況にある。

中露間にある微妙な温度差

 韓国におけるアメリカの行動に関して、中露は同じ危機感を抱いている。両者とも、遠いところにいるアメリカが韓国に進出してきて北朝鮮を刺激するのは、アメリカの自国民にとっては安全圏にいるだろうが、中露にとっては陸続きで隣接しているため自国に直接危険が及んでくるため非常に迷惑だという共通した不満がある。それは北朝鮮を守りたいという気持からのスタートではなく、自国を守るために、過度に北朝鮮を刺激しないでくれという主張だ。国連安保理で決めた2270号制裁を忠実に実行していくだけにすれば北朝鮮を追い詰めることができるが、さらに史上空前の米韓合同軍事演習を北朝鮮の目の前で強化することは、北朝鮮に反撃の口実を与え、戦争に突入する危険性を高めるというのが、中露両国の切迫した危機感だ。

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