最新記事

王毅外相はなぜ岸田外相の電話会談を承諾したのか?

2016年3月16日(水)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 このような中露両国の危機感の中、なにかしら微妙な中露間の温度差が伝わってくる。

 それはこれまで続けてきた中朝軍事同盟が果たしてきた役割を、ややロシアの方にシフトさせていきたいという中国のそれとない思惑と、シリア問題が生んだ米露対立とともに、米中が中露よりも先に、2270号決議に関するニゴシエーションを済ませたという微妙な心理的ズレだ。今では中国の方が、ロシアよりも「絶対に北朝鮮の暴走を許してはならない」という緊迫感が強い。

それは中国の「共産主義体制」が危機を迎えているために、わずかな不穏な動きをも招きたくないという逼迫感に満ちているからではないかと、筆者の目には映る。

 いずれにしても、米韓合同軍事演習を激化させて北朝鮮を刺激してくれるなというのが、中国の現在の切なる望みだ。日本を含めた米韓に対する不満でもある。

 一方、6カ国協議に持っていくには日本の協力は欠かせない。アメリカに物を言って抑制してくれる可能性が日本にならあるかもしれないとも、わずかながら期待している。ロシアに対しても6カ国協議の可能性を模索することを依頼している。そのためにも制裁は徹底してほしい。抜け道を作って欲しくない。

 これら複雑な要素が、これまで日本側の要求に応じて来なかった王毅外相が、ここにきて突然、岸田外相の電話会談に応じた理由ではないだろうか。中国政府関係者の回答は、このことを示唆しているように思えた。

[執筆者]
遠藤 誉

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-ネットフリックス共同CEO、ワーナー資産買収

ワールド

プーチン氏、米特使と22日会談と表明 凍結資産活用

ビジネス

マスク氏の投資は歓迎 買収は不可能=ライアンエアC

ビジネス

バークレイズ、欧州本社をパリに移転へ 意思決定機関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 3
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている「とてつもなく巨大な」生物...その正体は?
  • 4
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 5
    飛行機よりラク? ソウル〜釜山「110分」へ――韓国が…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    「怖すぎる...」モルディブで凶暴な魚の群れに「襲撃…
  • 9
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 10
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中