最新記事

軍事

新冷戦へNATO軍がポーランドで軍備倍増

ウクライナ東部などで軍事行動を活発化させる「ロシアの脅威」に対抗するため旧東欧諸国が集団防衛体制を強化

2015年6月4日(木)18時26分
ダミアン・シャルコフ

対露同盟 右からNATO軍、米軍、ポーランド軍の司令官 Cezary Aszkielowicz-Agencja Gazeta-REUTERS

 バルト海に臨むポーランドの基地には10年以上前からNATO(北大西洋条約機構)の北東多国籍軍団司令部が置かれてきた。目下その規模を倍増する計画が進んでいる。

 ウクライナ東部でロシアの支援を受けた親ロシア派の攻撃が続くなか、旧東欧圏のNATO加盟国は「ロシアの脅威」に警戒感を募らせている。集団防衛の強化を最も声高に訴えているのは、ポーランドとバルト3国だ。NATOはこの4カ国をはじめ東欧の加盟国の安全保障体制を強化するため、冷戦の終結以降、最大規模の防衛強化計画を進めている。

 ポーランドのシュチェチンにあるNATO司令部は、今年2月の国防相会議の決定にもとづき、NATOの新たな通信システムに正式に組み込まれることになった。常駐部隊の兵員も200人から400人に増やす計画で、NATO加盟国28カ国中、最大20カ国から兵員が派遣されると、ポーランドのメディアは伝えている。年内に400人体制を整える予定だ。

 ポーランドの司令部は、バルト3国のラトビア、リトアニア、エストニアに加え、ポーランド、ルーマニア、ブルガリアの6カ国に新たに設置される指揮センターと結ばれる。指揮センター設置の目的は、ロシアとの国境地帯における監視活動を強化し、「緊急即応部隊」の迅速な展開を可能にすることだ。

 常時出動可能な即応部隊の兵員も1万3000人から3万人に増員される。それに伴ってインフラと通信網を整備し、東欧6カ国の「前線」国家が攻撃された場合、即座に出動できる態勢を整える。

 シュチェチン基地の指揮官、ルッツ・ニーマン将軍によると、この基地が新たな役割を果たすためには、他の加盟国と新たな通信網を構築し、軍と特殊部隊のすべての部門に連絡将校を置く必要があるという。シュチェチン基地はまた、今後大々的に展開される合同の軍事演習の拠点にもなる。

 人員の増加と新型装備の導入に対応できるよう、2018年を目処に基地の施設を拡大中だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルのガザ攻撃で50人死亡、物資配給所付近で

ワールド

OPEC、域外産油国の供給量見通し下げ イラン攻撃

ワールド

イスラエル、イラン国営テレビを攻撃 イランは「最大

ワールド

イラン、イスラエルの軍事拠点攻撃を示唆か 「数時間
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中