最新記事

アフガニスタン

米軍のアフガン駐留を中国が望む理由

新疆ウイグルを拠点に西方拡大を狙う中国だがテロ封じ込めなど地域安全保障はアメリカ頼り

2014年4月10日(木)15時16分
シャノン・ティージ

タリバンの本拠地だったアフガニスタンのカンダハル州から米軍が去ったら? Andrew Burton-Reuters

 中国は経済面でも外交面でも西方への勢力拡大を計画している。昨年打ち出したシルクロード経済ベルト構想と海のシルクロード構想は、南アジア、中央アジア、そしてサウジアラビアなど湾岸諸国に接近する外交政策の一環だ。

 しかし、西方に向けた国内の経済拠点になるべき新疆ウイグル自治区では、少数民族ウイグル族による独立運動が激しくなる一方だ。中国政府にとっては、この地域の発展と治安の安定を図ることが、西方拡大のために必須の内政課題となっている。

 折しも西部国境の先にあるアフガニスタンでは、いよいよ米軍主導のNATO(北大西洋条約機構)軍部隊の撤収が迫り、地域の安全保障の構図が変わる。アフガニスタンのカルザイ大統領が米軍の駐留継続を可能にする2国間治安協定への署名を拒んでいるため、米国防総省は全面撤退という「ゼロ・オプション」まで検討中だ。

 しかしアフガン駐留米軍のジョセフ・ダンフォード司令官をはじめ米当局者らは、反政府武装勢力タリバンが勢いを取り戻した場合、現地政権だけでは対処し切れないとみる。もしも国際テロ組織アルカイダなどが活動を再開し、アフガニスタンが混乱状態に陥ったら中国にも大きな打撃となるだろう。

 既にパキスタン南西部のグワダル港と新疆ウイグル自治区を結ぶ物流網「中国・パキスタン経済回廊」の計画は、治安上の不安から実現が危ぶまれている。

現実に迫るテロの危険

 中国のもう1つの懸念は、不安定化したアフガニスタンやパキスタンが、新疆ウイグル自治区の分離独立を目指すテロ組織の訓練拠点と化すことだ。そんなテロ組織の母体と見なされているトルキスタン・イスラム党の指導者アブドラ・マンスールは、最近ロイターの電話取材に応えてこう述べた。

「中国での襲撃計画は多数ある。東トルキスタン(独立派は新疆ウイグル自治区をこう呼ぶ)の人々をはじめ、イスラム教徒は覚醒した。もはや中国はわれわれもイスラムも抑圧できない。イスラム教徒は復讐をする」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、年内は金利据え置きの可能性=ミネアポリス連

ワールド

ロシアとウクライナの化学兵器使用、立証されていない

ワールド

米、イスラエルへの兵器出荷一部差し止め 政治圧力か

ワールド

反ユダヤ主義の高まりを警告、バイデン氏 ホロコース
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 7

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 8

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 9

    ハマス、ガザ休戦案受け入れ イスラエルはラファ攻…

  • 10

    プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ …

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中