マクロスコープ:政界混乱示す「総総分離」案、専門家はトランプ氏来日への影響懸念

10月15日、政界の混乱を示すように永田町で「総総分離」がささやかれている。写真は国会議事堂。2016年7月、都内で撮影(2025年 ロイター/Toru Hanai)
Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 15日 ロイター] - 政界の混乱を示すように永田町で「総総分離」がささやかれている。現実的ではないとの意見が大勢ではあるものの、首相指名選挙で万が一主要な野党がまとまれば自民党の高市早苗総裁の勝利が見通せなくなるとの懸念が背景にある。カギを握る国民民主党の玉木雄一郎代表も首相指名の後ろ倒しを選択肢とする立場だ。
ただ、今月下旬以降はトランプ米大統領が6年ぶりの来日を予定するなど重要な外交機会が続く。辞任を表明した石破茂首相が短期間でも続投することに、専門家からは「不格好だ」などと外交面の影響を懸念する声も聞かれる。
<迫る「外交の季節」>
「欧州だと連立協議に数カ月かける。次の枠組みを丁寧に合意形成していく新しい政治文化やルールをこの際つくるべきだ」。玉木氏は15日朝、テレビ朝日の番組でこう述べた。21日に召集される臨時国会冒頭での首相指名にこだわらず、短期間でも石破首相が続投した上で連携のあり方を固めるべきだとの考えを示したものだ。
今回予定される首相指名は石破首相の辞任表明に伴うもので、辞任が先延ばしとなれば行われないことになる。
ただ、秋は「外交の季節」と言われる。26日から始まるマレーシアでの東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議を皮切りに、27日にはトランプ氏が来日予定。月末には韓国でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議も開かれる。
日本にとってはトランプ氏との会談に加え、中国の習近平国家主席や韓国の李在明大統領らと首脳会談を開く重要な外交機会とも言われてきた。分離となれば石破首相がこうした外交に臨むことになり、外務省関係者は「すぐに辞める首相で臨むと、期待できる成果がどうしても少なくなってしまう」と頭を抱える。
<野党連携「不調」なら無意味に>
もっとも、実際に分離となるかは不透明だ。自民内には否定的な意見が多く、鈴木俊一幹事長は14日の両院議員懇談会後、記者団に「我々としては原則、堂々と首相指名を得たい。(分離は)いま執行部として考えていない」と語った。石破政権のある政務三役も「理論的にありえるが、党内でも分離を求める声は少数だ。粛々と首相指名選挙をやり、みんなで『高市早苗』と書く」と言い切る。
そもそも分離が自民にとって利益となるのは、立憲民主党、日本維新の会、国民民主が統一候補を決めることで高市氏の選出が見通せなくなった場合だ。そのうちの1党でも野党間連携から外れれば、比較第1党の自民議員の投票により、高市氏の首相選出が確実視されることになる。
維新の藤田文武共同代表は15日午後、吉村洋文代表(大阪府知事)と高市氏の首脳会談を同日夜に行うと発表した。首相指名の投票先については「(現時点で)決まったものは何もない。そう簡単なものではない」と述べた。
<専門家「率直に言って不格好だ」と懸念>
「総総分離」の影響について専門家はどう考えるのか。
上智大学教授の前嶋和弘氏(米国政治)は、外交面の影響について「欧州などでは辞めることになっているリーダーが外交に臨むことは珍しくない。日本でそうなったとしてもご法度とは言えず、タイミング的に仕方ない部分もある」と話す。
ただ、「長期政権だからこそ様々な約束事ができるのが外交だ。仮に石破首相が続投して当面の外交に臨んだ場合、他国からは『辞めることが決まった人』と見られる懸念がある」とも説明。「トランプ氏は今度の首脳会談で、日米関税交渉で結んだ米国への5500億ドル(83兆円)の投資について韓国に言ったように『前払い』を求めてくるかもしれない。防衛費の増額を要求する可能性もある。新しい首相であれば『それは前の首相が決めたことだから一度検討する』とやり過ごすことができたが、石破氏ではそうはいかない。トランプ氏から『お前が決めろ』と言われれば対応が難しくなる」と語る。
法政大学教授の河野有理氏は「新政権をめぐる野党交渉は最後までわからない。立憲が安全保障政策は完全に国民民主に譲り、『原発はゆっくり考えましょう』とまとまる可能性はあると思う。自民が緊急避難的に首相指名を延ばして総総分離が長期化する可能性はあり得る」とみる。
一方で、「自民総裁が交代したのだから首相指名でそれを問うのが通例であり、分離の長期化が良いことではない」と指摘。「間もなく退陣するにもかかわらず石破首相が外交を続けるのは率直に言って不格好だ。他国にとっても完全にレームダックとなった首相との外交成果は考えにくいだろう」と述べた。
「総総分離」は首相(総理大臣)と自民総裁を別々の人物が務める状態を意味する。過去には首相や総裁の体調悪化、党内権力闘争の激化で「分離状態」が短期間続いたことはあったが、いずれも緊急避難的な事例との位置付けだ。権力構造の二分化を生むとの指摘もあり、党内合意を経た分離は例がないとされる。
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)
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