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外交

中国ナルシスト愛国心の暴走

2012年9月26日(水)15時46分
ロバート・サッター(ジョージ・ワシントン大学国際関係学部教授)

近い将来の解決は難しい

 要するに、中国当局がエリート層と民衆に植え付けてきた愛国主義には2つの特徴がある。中国が大国の犠牲になってきたという意識と、中国は外交において道義と正義を守ってきたという独特の強烈な意識だ。

 このため彼らは、近隣諸国やアメリカとの間で主権や安全保障をめぐる問題が起きると、中国ではなく相手側に原因があると考えるようになった。またアジアで主権や安全保障が関わるセンシティブな問題が起きて、他国が領有権を主張したり、中国に譲歩を求めたりすることに我慢できない。

 中国のエリート層と民衆が、南シナ海と東シナ海の問題に関して、政府にもっと厳しい態度を要求するのにはこうした背景がある。

 中国政府のイメージ戦略は見事に成功した。それだけに中国近海における緊張を緩和するのは一層難しくなったといえるだろう。これらの問題が近い将来解決される可能性は乏しい。

From the-diplomat.com

[2012年9月12日号掲載]

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