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中南米ベネズエラ最大の「輸出品」は人材
98年に初めてウゴ・チャベスを大統領に選んだとき、ベネズエラ国民は救世主になってほしいと期待した。だがチャベスは「専制君主」として企業や農園を接収。労働組合や政敵をつぶしにかかった。
あれから10年余り。チャベスに幻滅した多くの優秀な人材がベネズエラを後にしている。中南米経済システムの調査によれば、ベネズエラからOECD加盟国に流出した高度熟練労働者の数は、90~07年の間に216%増えている。
頭脳の大量流出で最も大きな打撃を受けているのは石油部門だ。
10年前、ベネズエラ石油公社(PDVSA)は世界で5本の指に入るエネルギー会社だった。だがチャベスは大統領就任後、業界経験のない大学教授を同社のトップに任命。これに抗議した同社幹部がストを行って国が麻痺状態に陥ると、チャベスは2万2000人を解雇した。多くのエリート社員を失ったPDVSAは、有能な人材の不足に苦しんでいる。
メディア界でも同じようなことが起こり、自由な報道は姿を消した。07年には、チャベスはテレビ局RCTVの放送免許の更新を拒否。最近は唯一の独立系ネットワークを閉鎖に追い込むと脅している。5月に起きた首都カラカスでの地震を政府発表より先に報じたというのが理由だ。
科学者たちの境遇も似たようなものだ。チャベスは大統領になると、それまで大学に支給していた研究費を、自分の影響力を行使しやすい公的プロジェクトに移した。同国の研究者が国際的な専門誌に発表する論文の数は最近3年間で15%も減少した。
チャベスの「仲間たち」が率いる他の国も同じようなありさまだ。ボリビア、エクアドルとニカラグアでも、指導者たちは憲法改定やメディア弾圧に力を注いでいる。
事態の悪化がさらなる人材流出を招く。ある調査によれば、30歳未満のボリビア人の3人に1人以上が国外移住を計画。10年前の12%から大幅に増えている。
これらの国々は世界経済フォーラムが発表する国際競争力ランキングで順位が下落。格付け会社フィッチは最近、ベネズエラ、ボリビアとエクアドルの債券をジャンク債並みに格下げした。
こうした国々には、天然資源は豊富にあるかもしれない。だが彼らの最大の輸出品は今や鉱物や石油ではない。国内にとどめるべき人材だ。
[2009年7月 8日号掲載]