最新記事

教育

学校は週4日制でいい?

アメリカで金曜日を休みにする学校区が増えている。学力向上にもつながるというのだが

2015年6月16日(火)11時27分
マデリーン・カミングス

休校日 いつもにぎやかな教室に生徒はいない GETTY IMAGES

 アイダホ州南西部ホームデールの農村地帯の金曜日。学校の教室に子供の姿は見えない。授業を受ける代わりに、子供たちはスポーツを楽しんだり家族と釣りに行ったりしている。

 先生も金曜日は休みだ。遅くまでゆっくり寝たり自己啓発のために時間を使う。

 この町のように週4日制にする学校区が全米で増えている。全体でどれだけの数なのかは分からないが、アリゾナ、コロラド、アイダホ、オレゴン州の当局によれば、近年増加しているとのことだ。特にアイダホが顕著で、州の教育委員会によると、115学区のうち42学区が週4日制を採用。過去4年間で倍増したという。

 週4日のメリットとは何なのか? 昔からよく言われているのは、休みを1日増やせばコスト削減につながるという点だ。

 だが最近は、週末を3連休にすれば子供の学習効率が上がり、教師の能力も高まるとの理由から、週4日制を導入する学校が増えている。特に金曜を教師の研修日に充てている学区は、そうした効果を狙っている。子供たちの課外活動がたくさん用意されていたり、親が子供の長くなった週末に付き合う余裕のある富裕層の学区でも、そうした理由から週4日制に移行する動きが目立つ。

「効率的に教えられる」

 週4日にしたほうが、学力が伸びると実証されているわけではないが、アイダホの例ではその効果が表れている。

 田舎の小さな町の多くがそうであるように、ホームデールも最初は週4日にすれば予算を節約できると考えていた。だがすぐに、削減できるコストはわずかでしかないことに気付いた。

 教育委員会全国連合は11年、週4日制にしている学区での年間のコスト削減率は0.4〜2.5%だと分析した。週休3日にしても、その分、4日間の授業時間は増えるため、教師の給与をカットすることはできない。学校は金曜も開放しておく必要のある日が多いため、光熱費も変わらない。削減できるところといえば、スクールバスやカフェテリアのコストぐらいだ。

 結局、ホームデールを週4日へと突き動かしたのは、学力の向上が見込める可能性だった。そして今のところ、その判断を後悔していない。ホームデールの教師たちは、授業内容を充実させることができるようになり、金曜は自分の研修に励めると、メリットを指摘する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

再送米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中