最新記事
日本企業

配線器具は「CO₂から作る」時代へ 日本を代表する電材メーカーとメタノール総合メーカーが共同開発

2025年5月19日(月)16時40分
西田嘉孝
コンセント

コンセントが炭素循環型社会の先駆けに?(写真はイメージです) Toru Kimura-shutterstock

<パナソニック エレクトリックスワークス社と三菱ガス化学が共同で開発した「環境配慮型ユリア樹脂」とは何か。誰の家にもある身近な「リサイクルできないもの」を持続可能にする挑戦>

普段の暮らしの中で私たちが毎日目にしている、コンセントなどの配線器具。誰にとっても身近なものだが、配線器具がどのような材料で作られているかを気にしたことがある人は少ないだろう。

これら配線器具に多く使われているのが「ユリア樹脂」という材料だ。

ユリア樹脂はショートや火災の要因となるトラッキングへの耐性が高く、火災安全性の高い材料としての長所を持つ。

一方で、一度割れてしまうと元に戻らない熱硬化性と呼ばれる性質を持つため、溶かして再成形できるPET素材のようにリサイクルができない。ユリア樹脂には、資源循環が難しいという課題があった。

たかが配線器具、とは言えないだろう。例えば、コンセントなどの総称である配線用差込接続器(一般用)は、日本国内だけで月に1200万個以上が製造されているのだ(日本配線システム工業会による2025年3月統計)。

写真の真ん中の差し込み口(白い部分)に使われているのがユリア樹脂

写真の真ん中の差し込み口(白い部分)に使われているのがユリア樹脂。耐アーク性や耐トラッキング性に優れたユリア樹脂は、パナソニック エレクトリックワークス社が使用する樹脂材料の約4分の1を占める Photo: Panasonic Electric Works

配線器具の資源循環をどう実現するか。この課題に挑んだのが、パナソニックと三菱ガス化学だ。

パナソニックはコンセントやスイッチなど電気設備資材を祖業とし、日本やアジアで高いシェアを誇る。同社の電材事業を担うパナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW社)によると、その国内シェアは約8割と他を圧倒。現在2位の世界シェアも順調に進展し、トップをうかがえる位置に付けている。

一方、三菱ガス化学は、上流から下流までメタノールに関わる事業の全てを手掛ける「世界唯一のメタノール総合メーカー」だ。同社によると、生産能力は世界3位で、日本に輸入されるメタノールの約60%は同社が海外プラントで製造したものだという。

両社は4月、CO₂から製造したメタノールを原料とする「環境配慮型ユリア樹脂」を共同で開発し、記者発表を行った。

対談
為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 セカンドキャリアの前に「考えるべき」こととは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相、来週訪米 トランプ氏とガザ・イラン

ビジネス

1.20ドルまでのユーロ高見過ごせる、それ以上は複

ビジネス

関税とユーロ高、「10%」が輸出への影響の目安=ラ

ビジネス

アングル:アフリカに賭ける中国自動車メーカー、欧米
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 6
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 9
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中