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配線器具は「CO₂から作る」時代へ 日本を代表する電材メーカーとメタノール総合メーカーが共同開発

2025年5月19日(月)16時40分
西田嘉孝

パナソニックEW社技術本部先端技術イノベーションセンターの川角優奈主任技師

炭素資源を循環させる環境配慮型ユリア樹脂の製造について説明する、パナソニックEW社技術本部先端技術イノベーションセンターの川角優奈主任技師 Photo: Newsweek Japan

工場の排ガスなどから回収したCO₂を炭素資源として活用

パナソニックでは、2022年に独自の長期環境ビジョン「パナソニック・グリーン・インパクト」を発表している。2050年までに3億トン以上のCO₂削減インパクトの創出を目指すカーボンニュートラルや、資源を効率的に循環させるサーキュラーエコノミーの実現を目標に据え、持続可能な社会に向けた取り組みを進めてきた。

そうした取り組みの一環として考案されたのが、ユリア樹脂をCO₂から製造するカーボンリサイクル(炭素資源の循環)のコンセプトだ。本来は大気中に排出されるCO₂を回収・固定化し、ユリア樹脂の原料となるメタノールを生成する技術を持つ三菱ガス化学と共同で、今回の環境配慮型ユリア樹脂の製造スキームを実現した。

熱硬化性樹脂であるユリア樹脂

熱硬化性樹脂であるユリア樹脂。例えば、コンセントの周縁部(記事冒頭の写真参考)は熱可塑性樹脂で熱に溶かして再利用ができるが、真ん中の差し込み口部分には火災安全性の高いこのユリア樹脂が使用される Photo: Panasonic Electric Works

「従来のユリア樹脂を使った製品は、化石資源から製造され、使用後には廃棄焼却されるという、いわゆるリニア型の生産構造となっていました。対して、環境配慮型ユリア樹脂も使用後は焼却されますが、工場の排ガスなどから回収したCO₂を炭素資源として活用することで、実質的な資源循環が可能になりました」

記者会見でそう話した、パナソニックEW社技術本部先端技術イノベーションセンターの川角優奈主任技師によると、環境配慮型ユリア樹脂では、従来のユリア樹脂に比べ、原材料ベースで約20〜30%のCO₂排出量削減が見込めるという。

また、成形プロセスなどには従来の設備をそのまま使用することができ、すでに従来品と変わらない品質のユリア樹脂の製造にも成功していると説明する。

同社と三菱ガス化学はさらに、メタノール製造プラントの大型化などを通じ、CO₂排出削減インパクトの拡大にもチャレンジする。パナソニックEW社では配線器具をターゲットに今年度の商品化を目指し、将来的には展開商材を順次拡大していく予定だ。

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