最新記事

ルポ特別養子縁組

TBS久保田智子が選択した「特別養子縁組」という幸せのカタチ

ONE AND ONLY FAMILY : A STORY OF ADOPTION

2020年12月25日(金)09時30分
小暮聡子(本誌記者)

久保田智子と夫の平本典昭(左)、2人の一人娘(20年11月末、久保田の自宅にて撮影) PHOTOGRAPH BY MAYUMI SUZUKI FOR NEWSWEEK JAPAN

<TBS元アナウンサーの久保田智子はなぜ養子を迎える選択をしたのか。特別養子縁組制度とは何なのか。特集「ルポ特別養子縁組」全文を前後編に分けて公開する(こちらはルポ前編です)>

「養子」という言葉を聞いたとき、どんなイメージを抱くだろうか。何か事情がありそうな子供、「かわいそうな」子供、もしくは「幸せな」子供――?
20201222Issue_cover200.jpg
こと「特別養子縁組」についての印象となると、今の日本では「どちらともいえない」が68.4%を占める。今年3月に日本財団が行った調査によると、この回答のほかポジティブなイメージを持っている人が25.4%なのに対し、ネガティブな回答をした人は6.2%しかいなかった。一方で、そもそも特別養子縁組制度について「内容をよく知っている」という人は、7%にすぎない。

特別養子縁組は、生みの親、養子となる子供、育てる親それぞれが幸せになることを積極的に目指す制度である。しかしこれまで、どちらかというと「子供の福祉のための制度」という視点が強調され、特別養子縁組によって親となることの喜びは広くは語られてこなかった。

TBS(東京放送)の元アナウンサーで、2016年に一度退社した後、12月1日付で同社の報道局に復帰した久保田智子(43)は19年1月28日、夫の平本典昭(42)と共に生後4日目の女児、ハナちゃん(仮名)を養子に迎えた。彼女は言う。

「こんなに幸せなことが起こるなら、もし子供を持つことを希望する人がいるのなら、若いうちから少しでも多くの人に選択肢の1つとして知ってほしい」。

ここにつづるのは、特別養子縁組がつないだ縁で母となった、久保田智子と家族の物語だ。

◇ ◇ ◇

特別養子縁組とは、厚生労働省の言葉で言うと、「子の福祉を積極的に確保する観点から、戸籍の記載が実親子とほぼ同様の縁組形式をとるものとして、昭和62年に成立した縁組形式」のことだ。

より一般的に認知されている「普通養子縁組」では、戸籍に「養親」と共に生物学上の「実親」が併記され、実親と養子との間に扶養・相続といった権利・義務等の法律上の関係が残る。これに対し、特別養子縁組では実親との親族関係は終了し、戸籍では養子の続柄は「長男/長女」等と記載される。実父母の名前はどこにもない。

端的に言えば、特別養子縁組とは法律上も「実の親子」になる制度である。

特別養子縁組は各自治体の児童相談所、もしくは民間団体によって斡旋されるが、その目的は「実親の元で暮らすことができない子供にとって最善の利益を保障すること」にある。

現在の日本には、実の親の元で暮らすことができない子供が約4万4000人いる。そのうち約8割は児童養護施設や乳児院などの施設で暮らしている。

国連が実親の元で暮らせない子供に里親等による家庭養育を推進するなか、16年、日本でも「全ての子供に家庭を」という方針に舵が切られた。児童福祉法が改正され、子供が家庭において心身ともに健やかに養育されることが困難な場合は必要な措置を取る、といった「家庭養育の原則」が明記されたのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-プーチン大統領、ウクライナ停戦

ビジネス

米耐久財受注、4月は0.7%増 設備投資の回復示唆

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、5月確報値は5カ月ぶり低

ビジネス

為替変動「いつ何時でも必要な措置」=神田財務官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目の前だ

  • 2

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」...ウクライナのドローンが突っ込む瞬間とみられる劇的映像

  • 3

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決するとき

  • 4

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリ…

  • 5

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 6

    テストステロン値が低いと早死にするリスクが高まる─…

  • 7

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 8

    日本を苦しめる「デジタル赤字」...問題解決のために…

  • 9

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 10

    「現代のネロ帝」...モディの圧力でインドのジャーナ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 7

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中