「私は大嫌い」「デミ・ムーアが最高の当たり役」...カンヌでも賛否両論、映画『サブスタンス』は良作か駄作か?
The Substance Lacks Any

落ち目のスターを体当たりで演じたムーア ©THE MATCH FACTORY
<落ち目のスターが謎の薬を注射して若い分身を作る『サブスタンス』は中身ゼロのがっかりホラー? ネバネバ描写好きにはおすすめかも──(ネタバレなし・あらすじ・レビュー)>
昨年のカンヌ国際映画祭で最も賛否が割れたのが『サブスタンス(The Substance)』だと聞いたときは、自分がどちら側に立つのか分かった気でいた。
落ち目のスターが薬物を注射し、若い女と体を交換するボディーホラー? 義肢や義眼などの人工装具とメークを駆使した特殊効果がすごい?
監督は中年女性? 主演は私の青春時代にハリウッドに君臨したデミ・ムーア(Demi Moore)で、一世一代の当たり役だと大評判? だったら、これは見るしかない。
どこかで聞いたような設定も、デービッド・クローネンバーグ(David Cronenberg)の『ザ・フライ(The Fly)』やジョン・カーペンター(John Carpenter)の『遊星からの物体X(The Thing)』など不朽のボディーホラーを思わせた。
少なくとも直球のB級ホラーとしては楽しめるはずだと、私は予想した。しかも恐怖を引き起こすのは50歳の女性という設定だから、フェミニスト的なひねりも期待できる。
だが残念ながら、期待はどちらも裏切られた。『サブスタンス』にはあっと驚くグロ要素も知的な深みも足りない。
主人公のエリザベス(ムーア)は黄緑色の薬物「サブスタンス」を自分に注射して若い分身スー(マーガレット・クアリー、Margaret Qualley)を作り、彼女と1週間おきにアイデンティティーを交換する。2人が道徳的に落ちるにつれて肉体は崩れ、変容はどんどん醜悪になる。