最新記事
映画

「私は大嫌い」「デミ・ムーアが最高の当たり役」...カンヌでも賛否両論、映画『サブスタンス』は良作か駄作か?

The Substance Lacks Any

2025年5月16日(金)18時22分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)

映画『サブスタンス』でスーを演じるマーガレット・クアリー

若い魅力を存分に振りまくマーガレット・クアリー ©THE MATCH FACTORY

だが、入れ替わりが伝えるのは毎回同じメッセージ。エリザベスは家父長制社会に迎合して「永遠の若さ」の幻想にしがみつき、魂と幸せになるチャンスを売ったのだ。

手を替え品を替えてどぎつく描かれる肉体の変容を通し、2時間22分もこの陳腐なテーマを突き付けられた日には、どんなに図太いフェミニストも「分かったから勘弁して」と言いたくなるだろう。


デミ・ムーアは見事だが

エリザベスはかつてハリウッドの殿堂ウオーク・オブ・フェイムに名前が刻まれるほどの大スターだった。だが老化を恐れるあまり、謎の男に誘われるがままファウスト的な取引をしてしまう。

その結果──7日間は、若くはないが健康でゴージャスな現状の肉体のまま、セックスシンボルとして稼いで買った高級マンションで暮らす。

次の7日間はこの世のものとは思えないほど魅力的な新世代のセックスシンボル、スーとして生きる。その間エリザベスは冬眠状態となり、スーは際どいピンクのレオタード姿で、かつてエリザベスのものだったエアロビクス番組で主役を張る。

サブスタンスを提供する会社は繰り返し、2人は1つの意識を共有する1つの存在であり、7日ごとに入れ替わるルールを破れば両方に害が及ぶとクギを刺す。

だが意識のあるときに顔を合わせない2人は、たちまち熾烈なライバル関係に陥る。入れ替わりを先延ばしにしたり、嫌がらせをして相手に尻拭いをさせたりする。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ米大統領のAI推進、低所得者層へ

ワールド

ムーディーズ、米格付けを「AA1」に引き下げ 財政

ビジネス

米国株式市場=5日続伸、貿易摩擦緩和期待で ユナイ

ワールド

ブラジルで鳥インフル確認、輸出規制の可能性も 商業
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    大手ブランドが私たちを「プラスチック中毒」にした…
  • 5
    宇宙の「禁断領域」で奇跡的に生き残った「極寒惑星…
  • 6
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習…
  • 7
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 8
    戦車「爆破」の瞬間も...ロシア軍格納庫を襲うドロー…
  • 9
    MEGUMIが私財を投じて国際イベントを主催した訳...「…
  • 10
    配達先の玄関で排泄、女ドライバーがクビに...炎上・…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」にネット騒然
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 7
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 8
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 7
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中