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「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル時代の新たな英語観「ELF(エルフ)」とは

2025年4月2日(水)18時05分
瀧野みゆき(社会言語学者、中公新書『使うための英語』著者)

ノンネイティブが英語で話すときに直面する5つの課題

「英語で話す」とき、私たちはさまざまな課題にぶつかる。代表的なものを整理すると、次の5つの課題がある。

話し始めに考え込んでしまう
「何をどう話せばいいだろう」と考えすぎて、沈黙が生まれ、会話の流れを止めてしまいがちである。双方が居心地悪さを感じるだけでなく。仕事では、「自信がない」という印象を与えるリスクもある。


論理の組み立てが難しい
どう順序立てて話を進めるべきか分からず、頭に浮かんだことから順番に話してしまう。日本語のように背景説明から始めると、英語では「要点が伝わらない」ことが多い。

日本語のアイディアが英語にできない
浮かんだ日本語の表現を、適切な英語表現にできない。特に、日本語の難しい表現や独特の言い回しを英語にしようとして、語彙が見つからず話しにつまってしまう。

簡潔な英文にまとめられない
慣れない英語では話を簡潔に言うのが難しく、要点がぼやけやすい。その結果、伝わったか不安で、同じことを繰り返し説明してしまい、話しが不必要に長くなりがちである。すると、相手も聴こうとする集中力を失いやすい。

即興で話すことが不安である
準備していない話題に対して、スムーズに意見を述べるのが難しい。事前に考える時間がないと、うまく言葉が出てこず、焦ってしまう。

型を使って英語で話すと、なぜ効果的なのか?

こうした課題を克服するために役立つのが、「話の型」を使った話し方 である。型を使うと予め構成を決まっているので、次のような効果がある。

話し始めやすくなる
決まった型に沿えば、考え込む時間が減る。迷わず、スムーズに話し始められる。

論理的に整理しやすい
型に沿って話すと、話の流れが明確になり、相手が理解しやすくなる。ビジネスの場では、特にこうした型が多用されるので、相手も安心して聞くことができる。

無駄を省き、簡潔に伝えられる
型に沿って要点に集中できるため、不要な背景説明を減らし、明解な流れがあるので、同じ話を繰り返すことが少なくなる。

自信を持って話せる
事前に話の構成が分かっていて、「自分の発言の全体像」が予測でき、不安感が軽減される。

応用力が上がる
型を使っていると、類似するテーマ表現や語彙を活用しやすくなる。型に適した表現を覚えておくことで、準備していない話題でも素早く話しやすくなる。

即興で話す力が向上する
型を使って話す練習を重ねることで、限られた時間でもスムーズに伝えるスキルが鍛えられる。特に、忙しいビジネスの場では、この能力が大きな武器になる。

このように、英語で話す「型」を活用すると、ノンネイティブが英語で話す際の課題の多くの解決に役立つ。次のページでは、具体的にどのような「型」があるのか例を示し、実際に意見を述べる練習を紹介しよう。

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