最新記事
軍艦島

軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも劣悪な労働環境でストライキ頻発、殺人事件も...

2025年1月24日(金)11時40分
風来堂(編集プロダクション)*PRESIDENT Onlineからの転載
軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも劣悪な労働環境でストライキ頻発、殺人事件も...

TOMO -shutterstock-

<軍艦島で取材したライターが語るTBS日曜劇場の「海に眠るダイヤモンド」のここがすごかった>

世界遺産の軍艦島に約5000人が住んでいた頃の様子をリアルに再現した日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)。

過去に現地で取材を行った編集プロダクションの風来堂さんは「ドラマを見て、島のシンボルである地獄段からヒロインが働く食堂までリアルに再現されているのに驚いた」という──。

島の食堂で焼いていたパンまで、70年前の軍艦島を忠実に再現

この秋に放送されたTBSの日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」。その舞台となったのが、九州の最西端、長崎県・野母崎半島の約4km西の海上に浮かぶ無人島の端島、通称「軍艦島」だ。ドラマでみごとに再現された70年前の端島の姿に衝撃を受けた人も多いだろう。

当時の白黒写真をカラーでよみがえらせた『カラーでよみがえる軍艦島』(風来堂、イースト新書Q)を手がかりに、ドラマの世界がどこまで現実に忠実なのか、探ってみたい。


物語は、かつて端島で暮らしていたという老齢の女性いづみ(宮本信子)の回想を中心に進んでいく。回想シーンは1955年から始まって、6人の若者たちが登場し、端島の生活をリアルに再現するとともに、彼らの青春時代が描かれる。

たとえば、第1話で長崎市から端島に帰ってきた鉄平(神木隆之介)と百合子(土屋太鳳)が訪れた、幼なじみの朝子(杉咲花)が家族とともに切り盛りする食堂。

モデルとなったと思われる「厚生食堂」そのままに、建物の半地下に位置している。提供されている料理も、看板メニューのちゃんぽんなど、そのままだ。

「日給社宅18号棟の1階には『厚生食堂』という食堂があった。戦前に会社の福利厚生施設として運営していたため、この名前が付けられた。和洋中さまざまなメニューを提供し、島民に愛された食堂だった。ちゃんぽんやうどんの他、奥にある窯ではパンが焼かれていた。」(『カラーでよみがえる軍艦島』)

また、リナ(池田エライザ)が暮らしていた独身女子寮が寺の1階部分にあることも、残されている端島の記録の通りだ。

2層分の高さがある鉄筋コンクリートの人工地盤と、岩盤をまたぐように寺院の本堂が建てられているため、下の道からはかなりの高さがある。

1階の独身女子寮の窓からリナが顔を出し、下にいる進平(斎藤工)と言葉を交わすシーンは、当時も実際にこんなことがあったのかなと思わせる。

地獄段も、高層建築物に囲まれて長く伸びている様子が実によく再現されていた。

「地獄段は端島銀座から始まり、日給社宅の16号棟と宮の下社宅と呼ばれた57号棟の間を、壁に沿って島の中央部の岩礁に向かって上っていく。この地獄段の下からの写真は、端島の代表的な風景として用いられることが多い」(同書)

ドラマの中でも、買い物をする多くの島民が地獄段の下の端島銀座を歩き、長い階段を行きかっていた。

newsweekjp20250122100253-587f9bda042509a75c959120d3b9570ee6f201d0.jpg

出典=『カラーでよみがえる軍艦島』を一部加工

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英CPI、10月3.6%に鈍化 12月利下げ観測

ビジネス

エア・インディア、中国・新疆ウイグル自治区上空の飛

ビジネス

東京海上、純利益予想を下方修正 外貨間為替影響やア

ビジネス

農林中金、4ー9月期の純利益846億円 会社予想上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中